古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

おろちが現れた!!

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 アシナヅチの屋敷は、八つの門がある垣根でぐるりと取り囲まれた。門ごとに強い酒がなみなみ入った酒樽が置かれていた。

 

「みなさん、ご協力ありがとうございます。まもなく八俣のおろちがやってくるでしょう。みなさんは家に帰り、戸をしっかり締めておいてください」

わたしが村人たちに呼びかけると、村人たちはそれぞれの家に帰って行った。

 

「さあ、これでよし。アシナヅチさん、テナヅチさん。あとはわたしに任せて、そなたらも家に入って、しっかり戸締りをしておきなさい」

 

そういうと、わたしは庭に生えている高い木の上に登り、その時を待つことにした。

 

そして、夕闇が辺りを包んだ・・・

 

にわかに生暖かい風が吹いてきた。

「来たな・・・」

 

わたしは恐怖感は全く感じなかった。むしろ、これからおこるであろう出来事に興奮していた。

わたしはもともと武の神だ。今までその神の力がおかしな方向に発揮されていた。しかし今まさに、その力を正しく使うことができるのだ!

 

拭いてきた風は、だんだん強くなってきた。木も森も、山さえも吹き飛ばす勢いだ。

そして腹の底から響くような、不気味な音も響いてきた。

 

その時!

 

山の向こうに、真っ赤に強く、不気味に光るものが現れた。その光は、だんだん大きくなり、近づいてきている。

 

その光の正体は・・・八俣のおろちの目だった!アシナヅチの言う通り、赤ホオヅキのように真っ赤に、不気味にらんらんと輝いている。その光で周囲は照らされ明るく見える・・・そう、おろちの身体さえも・・・

 

八つの頭に八つの尾、その巨大な体には杉や檜がうっそうと生えてカズラが全身に絡まり、醜くただれた腹からは真っ赤な地が滴り、その血が地面に落ちて流れるさまは真っ赤な小川かと思うほどであった。

 

すべて、アシナヅチの言うとおりだ・・・この姿で娘を食らうのか・・・皆が恐れるのも無理はない。

 

八俣のおろちは少しずつ、少しずつ、不気味な音を響かせながら、屋敷に近づいてきた・・・

  

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