古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオゲツヒメを訪ねる

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わたしは高天原を追われて、地上の日本に降り立った。

 

わたしの財物はすべて高天原の神によって身ぐるみはがされ、身体一つだけだ。どこに行く当てもない。

わたしは呆然として、さまよい歩いていた。

もう何もかも、考えるのは嫌になっていた。

 

しかし、そんな状況下でも、時間が経つと腹も減る・・わたしはそのうち空腹に耐えがたくなってきた。

 

そんなとき、わたしはオオゲツヒメのことをおもいだした。オオゲツヒメは父神イザナギと、母神イザナミが存命中に産んだ食物の神である。昔からわたしをよくかわいがってくれていた。

よし、オオゲツヒメを頼ってみよう・・・そう考えたわたしは、阿波の国のオオゲツヒメの神殿に向かっていた。

 

「あら、スサノオじゃない!ずいぶん久しぶりね。聞いたわよ、高天原のこと。まあ自業自得とはいえ、大変だったわね。」

 

オオゲツヒメは、私を快く歓迎してくれた。

 

「ああ・・・あの・・オオゲツの姉さん・・・」

「あら、どうしたの?高天原を追い出されたぐらいで、ずいぶん元気ないわね、暴れん坊のお前らしくもない。もっとしゃっきりしなさいよ!」

「・・・それが・・・腹が減って・・・」

「なんだ、そんなことか。待ってなさい、美味しいもの、ご馳走してあげる」

 

そういうと、オオゲツヒメは奥に引っ込んだ。

 

しかし、どんなものをご馳走してくれるのだろう・・・待ちきれなくなったわたしは、オオゲツヒメが入っていった神殿の奥のほうをのぞき込んでみた・・・

  

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オオゲツヒメ

 

オオゲツヒメは国生み神話で、阿波の国の別名としてまず出てきます。

 

古事記には「四国には一つの体に顔が四つあり、顔ごとに名がついている。伊予国をエヒメ、讃岐国をイイヨリヒコ、阿波国オオゲツヒメ土佐国をタケヨリワケという」

と記述されています。

 

 その後の神生み神話では、イザナミの死の原因となる火の神が生まれる直前に、食物の神として生まれています。

 

この二つのオオゲツヒメの関連性ははっきり分かりませんが、阿波、すなわち今の徳島県にはオオゲツヒメをまつる神社が複数存在しています。

 

wikipedia 上一宮大粟神社

wikipedia 一宮神社


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