「よし、それでは早速、準備に取り掛かろう」
わたしはクシナダヒメのほうを向くと、ひょいと抱き上げた。そしてクシナダヒメの長い髪にふっと息を吹きかけた。
すると、クシナダヒメは竹の櫛に変わった。私はそれを自分の髪に差した。
これでもう安心だ。クシナダヒメはわたしに守られるとともに、わたしはクシナダヒメの力をも得て戦うことができる。
クシナダヒメとわたしは身一つになったのだ。
その様子を見てあっけにとられているアシナヅチとテナヅチにむかって、わたしは言った。
「お酒を集めてください。なるべく強いお酒を、なるべくたくさん」
すぐさまアシナヅチとテナヅチは、村中を回り、酒を集めてきた。
その夜のうちに、屋敷の庭には、酒樽が山のように積まれていた。
翌朝・・屋敷の周りには、大勢の村人が詰めかけていた。
八俣のおろちを退治すると聞いて集まってきたのだ。わたしは村人にも協力を呼び掛けた。
「屋敷の周りをぐるり取り囲む垣根を作ってください。その垣根の周りには八つの門を作り、門は頭一つ入るだけの大きさにして周りを木の枠で囲ってください。
そして門ごとに、強い酒の入った酒樽を置いてください!」
村人たちはわたしの指示通りに働いた。村人たちも八俣のおろちにはひどい目に合わされているのだ。おろちがいなくなるのならと、みな心を一つにして働いた。
そして夕刻になり、アシナヅチの屋敷は、八つの門がある垣根でぐるりと取り囲まれた。門ごとに強い酒がなみなみと入った大きな酒樽が置かれていた。
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