八俣のおろちは、その恐ろしい姿で屋敷に近づいてきた。
そして間近に近づいてきた・・
しかし、屋敷の周りはぐるりと垣根でかこまれている。
ぐうぉーっっ!!
突如、おろちは恐ろしい声を上げたかと思うと、その八つの頭を高く持ち上げた。屋敷を囲む垣根に気づいたのだ。おそらく、『こんなもん、踏みつぶしてやれ!』と、考えたに違いない。
勿論、こんなちゃちな垣根でおろちの侵入を防ぐことなどできないことくらい、計算済みだ。
わたしが垣根を作らせた理由は別のところにあるのだ。
八つの鎌首を上げたおろちだったが、そのとき、おろちは酒の匂いに気が付いたのだろう。その赤く光る眼は、門の内側においてある酒樽にとまったようだ。
おろちは早速、八つの門から八つの頭を突っ込むと、酒樽に首を突っ込み、酒を飲み始めた。
ずずずーっ
おろちは大きな音を立てながら酒をすすっていく。その音が八つの頭から同時に聞こえるのだ。なんともいえぬ不気味な響音が響いていた。
そして・・・
ごおーーっ!
こんどはおろちの大きないびきが聞こえてきた。
八つの頭で一気に強い酒を飲み干したのだから、無理もない。八つの頭のてっぺんから八つの尾の先まで、酒が回って酔いつぶれて寝てしまったようだ。
よし!この時を待っていた!
わたしは腰に差していた十束の剣を抜くと、おろちの一つの頭めがけて、飛び降りざまに切りつけた!!
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☆十束の剣
神話ではいろんな神様が「十束剣(とつかのつるぎ)」を使っています。
「束(つか)」というのは長さの単位で、おおよそこぶし一つ分くらいの幅を言います。すなわちこぶし10個分くらいの刀を差す言葉です。
スサノオがおろち退治に使った十束剣は備前国の石上布都魂神社(いそのかみふつみたまじんじゃ)に納められましたが、崇神天皇の御代に石上神宮に移されました。
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