わたしは出雲国に来ていた。
別にあてがあったわけではない。日本の国をさまよい歩き、気が付いたら出雲まで来ていた。
出雲を流れる斐伊川のほとりに、わたしは来ていた。もう日が暮れようとしている。夕闇がわたしの心に重くのしかかる・・・
そう、昔からわたしをかわいがってくれたオオゲツヒメを斬り殺した・・・その後悔の念というのだろうか・・・そしてこれからの行くあてのない不安・・・
わたしはただ、川岸に立って、疲れ果てて、流れる川面を見ていた。
≪斐伊川≫
・・・その時だった・・・
上流から川の流れに乗って、流れてきたものに目が留まった。小さいものだったが、なぜか気になった。なんだ、あれは?
川の中に入り、それを拾い上げてみると・・・
一対の箸だった。
箸が流れてきたということは、この川上に人が住んでいるのか・・・どんな人たちだろうか・・
気になった。そして川上のほうを訪ねてみたくなった。
わたしは斐伊川に沿って、上流のほうへと歩きだしていた。
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☆箸
古事記にも記述があるほど日本での箸の歴史は古く、奈良時代には一般庶民も箸を使って食事をしていたようです。
一方、ヨーロッパでは貴族も庶民も手づかみで食事をしており、ナイフやフォークが一般的になったのは19世紀のころでした。
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