古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオゲツヒメを・・・

f:id:karibatakurou:20201222055722p:plain

 

わたしはオオゲツヒメのもとに行き、食べ物を乞うた。

オオゲツヒメは「待ってなさい、美味しいもの作ってあげる」というと、神殿の奥に入っていった。

 

いったいどんなものを食べさせてくれるんだろう・・・空腹に耐えかねていたわたしは、オオゲツヒメを追いかけるように神殿の奥に入っていき、オオゲツヒメの様子をのぞき込んだ。

 

すると、そこには・・・

 

祭壇の前にオオゲツヒメがが立っていた・・・なにやら祭壇に向かってのりとを唱えていた。

と、その時・・・口の中から食べ物を吐き戻した・・・さらにしゃがんだかと思うと、尻からも食べ物を排きだしたのだ!

 

それを見ていたわたしは驚き、青ざめた・・・まさか、わたしにゲロやクソを食わせる気か!

青ざめたわたしだったが、次に頭に血が上った。このわたしに、そんな穢いものを食わせる気か!!

 

こうなると、わたしはもう見境つかなくなっていた。わたしはオオゲツヒメの前に飛び出していた。

 

「あら、スサノオ、どうしたの?もうすぐできるから、あっちで待ってらっしゃい」

 

しかし、そんなオオゲツヒメの言葉はもう耳に入らなかった。わたしは腰に差していた十束の剣を抜くと、オオゲツヒメを一刀両断に斬ってしまった!!

 

・・・オオゲツヒメは、叫ぶ間もなく絶命してしまった・・・

 

神殿を静寂が覆った・・・わたしはいったい、何をしたんだろう・・・

 

そこには少し冷静になったわたしがいた。血だらけのまま、まだ生血が滴る剣をもって・・・

 

オオゲツヒメは食物の神だ。食物の神であるオオゲツヒメの体から出た食べ物が、穢いはずあり得ない・・・

 

なのに・・・わたしはオオゲツヒメを殺してしまった・・・昔からわたしをかわいがってくれていた、オオゲツの姉さんを・・・

 

私は今まで感じたことのない、重々しい感情が湧き上がってくるのを感じた・・・これが「後悔」というものだろうか・・・

 

イザナギに勘当を言い渡された時も、姉アマテラスが岩屋に閉じこもった時も、そんな感情はなかった・・・しかしオオゲツヒメを殺した今、その暗い感情が私を覆っているのがわかる・・・

 

いたたまれなくなったわたしは、駆け足でオオゲツヒメの神殿を飛び出し、行く当てもなく走っていた・・・

 

前<<<  オオゲツヒメを訪ねる - 古事記の話

次>>>  箸が流れてきた - 古事記の話



スサノオの自伝 目次

 

☆その後

 

オオゲツヒメの遺体からは、蚕・稲・粟・小豆・麦・大豆が生じました。これを造化三神カミムスビが手に取り種としました。

これ以降、日本の国でこれらの農産物が栽培されるようになりました。

 

  

kojikinohanasi.hatenablog.com

 



≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話