古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

策略

神武天皇の自伝 25 わたしはヤソタケルのもとへ使者を送った。 「我々は決してあなた様に反抗する気はございません。あなた様に仕えたいと思い、日向から出向いてきたのでございます。 その証にあなた様を宴にお招きしたいと思います。ぜひ、兵士の皆さまも…

忍坂にて・・

神武天皇の自伝 24 宇陀でエウカシを誅殺したわたしは、オトウカシも味方につけて、皇軍を率いてさらに大和を目指す。 そして忍坂(おしさか)までたどり着いた。ここは大和の平原の西の端だ。ここを越えればいよいよ大和である。 この忍坂はヤソタケルが支…

宴の席で

神武天皇の自伝 23 エウカシは自分が仕掛けた罠にはまって死んでしまった。 オトウカシは改めてわたしに恭順の意を表した。そして今度は本当に我々を歓迎する宴を開いてくれたのである。 オトウカシはわたしだけでなく、側近や従者、兵士たちも招いてくれた…

エウカシの末路

神武天皇の自伝 22 わたしはミチノオミとオオクメを伴ってエウカシのもとへ出向いて行った。 エウカシは新しく造った宮の前で待っていた。わたしを見ると、満面の笑みで出迎える。 「ようこそ、天の御子様、よくいらっしゃいました。さあ、宮の中では宴の準…

オトウカシが訪ねてくる

神武天皇の自伝 21 わたしはミチノオミとオオクメを伴い、エウカシ・オトウカシの兄弟の屋敷に出向こうとしている時だった。 兄弟の弟、オトウカシが我々の陣を訪ねてきたのである。 「オトウカシ、どうした?わたしは今からそなたの屋敷を訪ねていくところ…

屋敷を訪ねる

神武天皇の自伝 20 わたしはエウカシ・オトウカシの屋敷を攻撃すべく進軍の準備をしている最中だった。その時、一人の使者がわたしの陣を訪ねてきたのだ。 使者はエウカシ・オトウカシの兄弟からだった。 「先ほどは天の御子の使者ともあろうものに、大変無…

八咫烏の遣い

神武天皇の自伝 19 皇軍は八咫烏に導かれ、途中味方を増やしながら進軍していき、宇陀に入っていった。 味方に加わったこの土地の者の話によると、宇陀はエウカシ・オトウカシの兄弟が支配する土地であるという。 「エウカシ・オトウカシの兄弟は他者の干渉…

八咫烏とゆかいな仲間たち

神武天皇の自伝 18 タカクラジは、続けて夢の話をする。 「アマテラス大御神に続いてタカミムスビの大神がおっしゃいました・・・」 その話によると・・・ ここから先、荒ぶる神が多いので、このまま進んではいけない。これから天より八咫烏(やたのからす)…

タカクラジが見た夢

神武天皇の自伝 17 タカクラジの持ってきてくれた剣のおかげで、我が皇軍は息を吹き返し荒ぶる神も退けられた。 「タカクラジ、ありがとう。助かったよ。でも、どうやって、この剣を手に入れたんだい?それに、アマテラス大御神の使いって、どういうことだ?…

剣を受け取る

神武天皇の自伝 16 ・・・・・・・・・・ ・・・いったい、どうしたというのだ・・・・ ・・・・そうだ・・・わたしは熊に襲われ、兵士もろとも気を失ったんだった・・・ ・・・・と・・・すると・・・ 「え、こうして寝ている場合じゃないぞ!!」 わたしは…

熊との遭遇

神武天皇の自伝 15 嵐に流されて上陸した皇軍は、陸路、大和を目指していく。 しかしそれは険しい山道だった。これまで艦船を自由に操ってきた我々は、今までとは全く違った苦しい道のりを進んでいた。 時には背の高い草をかき分け、時には切り立った崖沿い…

嵐に遭遇

神武天皇の自伝 14 熊野の神邑(みわむら)を出港してしばらくのことだった。 それまで順調な航海が続いていたが、にわかに雲行きが怪しくなり始めた。空の色が暗くなったかと思うと、風が吹き始め、だんだん強くなる。雨も降り始めた。 そして見る見るうち…

神に祈る

神武天皇の自伝 13 名草村でナグサトベを誅殺した後、わたしは艦隊を出港させて、紀国の沿岸を南に進んでいた。 紀国の南端を越えて、今度は沿岸に沿って針路を北にとり、狭野(さの)にいったん上陸した。そこでいったん休憩を取り、さらに艦隊を進める。 …

ナグサトベの攻撃

神武天皇の自伝 12 兄イツセを亡くしたわたしは、竃山にイツセを葬った後、軍勢を率いて港に停泊している艦船に戻っていた。 そこへ、見回りの兵士が駆けつけてきた。 「イワレさま!また軍勢が攻めてきてます!」 「なんだと?!」 一体、どこの軍が攻めて…

イツセを葬る

神武天皇の自伝 11 「ああ、わたしはあんな卑しい奴の手傷を受けて死ぬのか!!」 それっきりだった・・・その雄たけびを最後に、兄イツセは息をしなくなってしまった・・・ 「兄上~~!!」 わたしは混乱していた。イツセとの、生前の記憶が頭をめぐる・・…

イツセの雄たけび

神武天皇の自伝 10 ナガスネビコの軍勢に奇襲を受けた我々は、命からがら船に戻り、艦隊を出港させた。 この戦いで兄イツセは腕に敵軍の矢を受けていた。 「兄上、しっかり」 わたしは矢を抜き、イツセの傷の手当てをするが、しかし出血が多い。大丈夫だろう…

白肩津に上陸するが・・

神武天皇の自伝 9 こうしてサオネツヒコの案内で、潮の流れのはやい速吸門を艦隊は無事に通り抜けていった。 艦隊はさらに東に進み、浪速の岬から河内の湖に入っていった。艦隊は河内の湖の奥、白肩津に停泊した。 ここからは陸路となる。我々はここから東側…

亀に乗った男

神武天皇の自伝 8 我々は高島宮を出港し、東に向かっていた。 風は順調、追い風の乗って艦隊は進んでいた。 そんなあるとき・・・ 「イツセさま、イワレさま、あれをご覧ください」 従者が船の進む先を指さす。その指した指の先には・・・ 大きな亀がいた・…

吉備に滞在

神武天皇の自伝 7 我々の艦隊は安芸の国を出港し、瀬戸内海を西に進んでいた。 そして吉備の国に至り、ここに上陸した。 われわれはここでも歓迎を受け、吉備の国人が用意してくれた高島宮に滞在することになった。 我々が宮に入った翌日、この地の長老が我…

安芸に滞在

神武天皇の自伝 6 岡田宮を出港した艦隊は、瀬戸内海を西へ西へと進んでいく。 そして安芸の国に入った。補給のため、我々は安芸の国に上陸した。 そこは深い森だった・・・既に一日も終わろうとしていて日も暮れかけ、あたりは薄暗くなっている。 薄暗い中…

岡田宮に滞在

神武天皇の自伝 5 宇佐を出港した我々の艦隊は、そのまま九州の東岸を北上し、筑紫の国に入った。ここは瀬戸内と玄界灘の境にある海上交通の要所である。 我々は休養・補給とともに、東征への足掛かりとしてこの地を抑えておこうと考えていた。 そこは豪族の…

宇佐に上陸

神武天皇の自伝 4 日向の美々津を出港した我々は、九州の沿岸沿いに北上していった。順調に艦隊は進み、豊国(とよのくに)の宇佐に至った。 我々は補給と休憩のために宇佐の港に入港した。 宇佐の港に入港した我々は大歓迎を受けた。そしてこの土地を支配す…

出港

神武天皇の自伝 3 その年の10月のある日、わたしと兄イツセの兄弟と、わたしたちの従者側近、それに高千穂宮の軍勢が日向の美々津港に集まった。これから日向から東国に遷都すべく、艦隊を組んで出港し海を東に向かう。 出港の前日、我々は港のそばに航海の…

ゴー・イースト

神武天皇の自伝 2 その日もわたしは高千穂宮で、兄イツセと政務について話し合っていた。 その時、イツセが言った。 「最近、日本の国で、我々の命令が届かないことが増えてきたな・・・」 わたしは答えていった。 「そうですね・・・東国では高千穂宮の目…

神武天皇の自伝 プロローグ

神武天皇の自伝 1 わたしの名はイワレ。日向の国、高千穂宮で生まれた。 わたしの父はウガヤフキアエズ。日の神アマテラスの子孫である。 日向の地に降臨した天孫二ニギから数えて三代目となる。 わたしから見て曽祖父となる二ニギの代から、祖父ホオリ、父…