神武天皇の自伝 21
わたしはミチノオミとオオクメを伴い、エウカシ・オトウカシの兄弟の屋敷に出向こうとしている時だった。
兄弟の弟、オトウカシが我々の陣を訪ねてきたのである。
「オトウカシ、どうした?わたしは今からそなたの屋敷を訪ねていくところだったのだが・・」
わたしの問いに、オトウカシが答える。
「はい、実はこれは策略なのです。兄のエウカシは、天の御子を罠にはめようと待ち構えているのです」
「なに・・・そうか・・・八咫烏を射るような奴がこんなに素直に恭順するものかとは思っていたが、やはりな・・・
そなたの兄、エウカシは、何をたくらんでいるのだ?」
「はい、兄は使いの烏を追い返した後、天の御子を攻め立てるべく軍勢を集めようとしました。しかし、普段から人望のない兄のもとには、思うように軍は集まりませんでした。
そこで兄は策略をめぐらしたのです。兄は歓迎のためと偽って宮を建てました。しかし、その入り口には板が渡してあり、それを踏むと板が跳ね上がってつぶされてしまう仕掛けを作って待ち構えております」
「う~ん・・そうだったか・・・危うくだまされるところだった・・・オトウカシ、ありがとう。助かったよ。
よし、ミチノオミ!オオクメ!行くぞ!」
わたしは二人の忠臣を伴い、エウカシのもとに出向いて行った。
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☆オオクメ
オオクメも天孫降臨の際二ニギを護衛したクメの子孫になります。その後裔は久米直(くめのあたい)と称する部族になりました。
富山県氷見市の久目神社ではオオクメを祀っており、この地を開墾した後裔の久米氏が祖神をまつったものだそうです。
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