神武天皇の自伝 20
わたしはエウカシ・オトウカシの屋敷を攻撃すべく進軍の準備をしている最中だった。その時、一人の使者がわたしの陣を訪ねてきたのだ。
使者はエウカシ・オトウカシの兄弟からだった。
「先ほどは天の御子の使者ともあろうものに、大変無礼な真似をしてしまいました。どうかお許しください。みたこともない大きな烏がいきなり人語をしゃべったので、気が動転して矢で射ってしまったのです。後から大変な過ちを犯したことに気が付きました。
お詫びのしるしに、宮を建てて歓迎の宴を準備をしております。どうぞ、我々が建てた宮にお越しくださいませ」
使者は口上を述べると帰っていった。
う~ん・・・歓迎するといわれても、素直に信じてよいものであろうか・・・
「あの兄弟がこんなに簡単に従順するとは思えません。何か裏があるはずです。お気を付けくださいませ」
途中から仲間に加わったこの土地の神が進言する。
しかし、恭順の意思を見せているのに、それを無視して攻撃するのも気が引ける・・・
・・・迷ったが、とにかくまずはその歓迎を受けてみることにした。念のためにミチノオミとオオクメを伴うことにした。彼らは天孫降臨の際、天孫二ニギを導いてきたオシヒとクメの子孫である。代々、我が皇軍を束ねてきた、信頼がおける忠臣である。
わたしが二人を伴って兄弟の屋敷に出向こうとした時だった・・・
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☆ミチノオミ
天孫降臨の際、二ニギを護衛したオシヒの子孫です。その後裔は大伴氏となり飛鳥時代・奈良時代にかけて権力をふるいました。大伴旅人や大伴家持などの万葉歌人も多く輩出しています。
京都の住吉大伴神社でオシヒとともに祀られており、ここは平安京遷都に際し大伴氏が氏神として祀ったものだそうです。
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