神武天皇の自伝 2
その日もわたしは高千穂宮で、兄イツセと政務について話し合っていた。
その時、イツセが言った。
「最近、日本の国で、我々の命令が届かないことが増えてきたな・・・」
わたしは答えていった。
「そうですね・・・東国では高千穂宮の目が届かないことをいいことに豪族がやりたい放題、民が苦しんでいるという話が伝わってきます。」
「うむ・・・そうだな・・・そんな豪族に我々の命令を守らせなければ・・・しかし、どうすればよいか・・・」
「何分、日本の国は広いですもんね・・・日向は日本の西の端だし・・・日本の国の隅々まで命令を伝えるのは無理がありますね・・・」
「イワレ、その通りだ。
・・・ならばイワレ、どうだ?都を東国に遷してみては?!」
「え・・・都を遷す、って・・・兄上、どういうことですか?」
「そのまんまだよ!
お前、今自分で言ったばかりだろう、日向は日本でも西に偏りすぎてると。
ならば我々が日本の中心に行けばいいんだよ。そうすれば東国にも西国にも目が行き届くようになるし、命令をまんべんなく伝えることができる」
「・・・確かにその通りですが・・・兄上、本気ですか?遷都となれば、相当な労力がかかると思われますよ!」
「イワレ、それでもやらなければならないんだ!
イザナギとイザナミがお産みになり、オオクニヌシが作り上げ、アマテラス大御神が譲り受けたこの日本の国だ。
アマテラス大御神の子孫として日本を統治している我々は、すべての民に神の恵みがいきわたるように果たす義務がある!」
「それは、そうですけど・・・」
・・・兄イツセは、本気で東の国へ都を遷すべきだと考えたようだ。
しかし、そんなにうまくいくものか・・・東に行くといっても、その道々には多くの困難が待ち受けているだろう・・・
・・・だが、何を言ってもイツセは動じなかった。より良い日本を作るという信念に向かって突き進んでいった。
わたしは一抹の不安は覚えていた。しかしイツセの信念は理解できていた。
そしてわたしも、イツセに従って東に向かうことを決めたのだった。
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☆ゴー・イースト
神武天皇が「 ♪ Together!~ Go East ~~」と歌ったのか知りませんが・・・
神武東征の物語は、九州にあった邪馬台国(もしくは九州王朝)が東に勢力を拡大し、大和を本拠地にして大和朝廷になる過程を反映しているといいます。(諸説あります)
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