神武天皇の自伝 11
「ああ、わたしはあんな卑しい奴の手傷を受けて死ぬのか!!」
それっきりだった・・・その雄たけびを最後に、兄イツセは息をしなくなってしまった・・・
「兄上~~!!」
わたしは混乱していた。イツセとの、生前の記憶が頭をめぐる・・・
・・ああ、兄イツセは死んだ・・・これは現実なんだ・・・
イツセの遺体は紀国(きのくに)の竃山(かまやま)に葬った。
わたしは脱力感に襲われていた。
・・・これまで、日本の国を力強く引っ張ってきた兄・・・わたしは兄を補佐しつつ、兄の明晰な頭脳、的確な判断力、熱意ある行動力に感嘆してきた。
・・・ああ、その兄はもういない。わたしは、どうすれば・・・
・・・ああ、もう、日向に帰りたい・・・
その時だった
「イワレさま・・・」
その声に、わたしははっと我に返った
声をかけたのは、側近の一人だった・・・
・・・気が付くと、多くの側近、従者、兵士らがわたしの周りを取り囲んでいる。皆、心配そうな表情をしてわたしを見つめている。
・・・そうだった・・・わたしは彼らの上に立つ身だ・・・兄イツセがなき今、わたしが彼らを引っ張っていかねば・・・
わたしは勇気を振り絞り、立ち上がった。もう後に戻る道はない。
「これから熊野に回り、そこから上陸して大和を目指す。行くぞ!」
わたしは力強く命令を出した。
「おおーーっ!!」
「イワレさま、ばんざーい!!」
兵士たちから歓声が上がる中、我が皇軍は艦隊の停泊地に戻っていった。
前<<< イツセの雄たけび - 古事記の話 (hatenablog.com)
次>>> ナグサトベの攻撃 - 古事記の話 (hatenablog.com)
☆竃山神社
イツセを葬ったという竃山。
和歌山県和歌山市の竃山神社にイツセは祀られています。境内にある竃山墓がイツセの陵墓と伝えられています。
≪古事記関連の姉妹サイト≫
小説古事記
古事記ゆかりの地を訪ねて
≪その他の姉妹サイト≫