神武天皇の自伝 13
名草村でナグサトベを誅殺した後、わたしは艦隊を出港させて、紀国の沿岸を南に進んでいた。
紀国の南端を越えて、今度は沿岸に沿って針路を北にとり、狭野(さの)にいったん上陸した。そこでいったん休憩を取り、さらに艦隊を進める。
わたしは部下の手前、表面は力強く振舞っていた。部下たちはわたしを信頼してついてきてくれている。
しかし、内心では、兄イツセを亡くした不安と心細さはなかなか打ち払えなかった。わたしはそんな浮かない気持ちのまま、航海を進めていた。
そして熊野の神邑(みわむら)に上陸した。ここで補給のため、しばらく滞在することにした。ここの村人は皇軍に好意的で、補給は好調に進んだ。
その時、この村の長老がわたしに語り掛けてきた
「イワレさま、この近くに神の山と言われる天磐盾がございます。ひとつ、その山でこれからの武運を祈願してみてはいかがでしょう」
「ああ・・・それもいいな」
わたしはその長老が進めるまま、天磐盾に登っていった。山の上には大きな岩があった。なんでもこれが神が宿る磐座だという。
わたしはその磐座の前で一心に天地の神に祈った。
神に祈ると、いくらか兄を亡くした不安も和らいだ。
そして補給が済むと、わたしは艦隊を出港させた。
兄イツセの遺命に従い、ここからさらに北上し、紀国の西岸から上陸して進軍して、東から上る日を背に受けて大和を目指していく手筈である。
艦隊は沿岸に沿って北上していった・・・。
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☆狭野
☆熊野の神邑
イワレが上陸した熊野の神邑は、和歌山県新宮市の阿須賀神社(あすかじんじゃ)付近と考えられています。
☆天磐盾
イワレが武運を祈願した天磐盾は、和歌山県新宮市の熊野速玉大社摂社の神倉神社と云われています。
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