神功皇后の自伝 10
出港の準備は整った。
わたしは将兵の前で宣言した
「これより未知の国に遠征します。
敵が少なくても侮ってはなりません!多くても恐れてはなりません!
また敵地であっても、婦女への暴行は許しません!また、降伏してきたものを殺してはなりません!
軍紀を乱し私欲をむさぼり自分のことしか考えないものは、おそらく敵に捕らえられることになるでしょう!
逃亡したものは処罰されます。しかし、この戦いに勝てば、賞はあなた方に与えられるるのです!
我らが皇軍は神の和魂(にぎみたま)に守られ、荒魂(あらみたま)に導かれ、きっと勝利することでありましょう!!」
おおーっ!!
将兵から鬨の声が上がる。士気はすこぶる高い。
そして皇軍は出港した。兵員たちは船に乗り込み、海に漕ぎ出していく。
わたしと重臣の建内宿祢(たけうちすくね)が乗る旗艦を先頭に、艦隊は那の津の海を進んでいく。
海の神が鎮座される志賀島の横を通り過ぎていく。わたしは建内宿祢とともに、志賀島に遥拝し、航海の安全と戦勝を祈った。
艦隊は玄界灘に出てきた。遠くに宗像三神が鎮座される島がかすんで見える。
玄界灘の荒波を乗り越えながら艦隊は進み、対馬の和珥津(わにのつ)に集結した。ここまでくれば、北の方に陸地がはっきり見える。
あれが、わたしの身体に降臨した神がお告げになった宝の国か・・・気が引き締まる思いだった。
そして艦隊は、10月のある日、和珥津を出港していった。
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☆和珥津
神功皇后が朝鮮に向けて出港していった和珥津は、対馬の最北端、まさに朝鮮半島を望む地である現在の鰐浦と考えられております。
壱岐・対馬には神功皇后にかかわる数々の伝承が残されています。
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