アメノヒボコの自伝 3
わたしが捕らえようとしたその男は、懐から赤い玉を取り出した。その真紅の玉は、神々しい光を放っていた。まるで、この世のものではないようだ・・・わたしはその光に魅せられ、あたかも光に誘われ玉の中に引き込まれるような思いだった・・
「王子様・・・いかがなされました?」
従者の声でふっと我に返った。わたしは男の方を振り返り、聞いた。
「どうしたのだ、この玉は?」
「へえ、それは・・・」
男はその玉を入手した経緯を語り始めた。男の話によると・・・
新羅国内にアグヌマと呼ばれている沼があった。この沼のそばを男が通りがかったとき、不思議な光景を見たそうだ。
沼のほとりでは、一人の少女が昼寝をしていた。
そのとき、日の光が突然、強く明るく輝いた。そしてあたかも稲妻のように、その光は一条の光線となって、少女を照らしたのだ。
少女の身体はあたかも虹のように輝いた・・・と思うと、次の瞬間、日の光は元に戻って、また元の穏やかな陽が二人を照らしていたという・・・
男は何が起こったのかと、茫然としていた・・・一方、光に照らされた少女の方も、訳が分からず放心していた・・・
と、思うと・・・
少女の腹がみるみる内に膨らんできたのだ・・・さっきの光で妊娠したのか・・・まさか・・・
しかし少女に突然陣痛が襲ってきたのかと思うと、件の赤い玉を産み落としたという・・・
何事なのか全く理解できず、呆けた顔で座り込んでいる少女・・・
それを見て、少し落ち着きを取り戻した男は言ったそうだ
「お嬢さん、ご心配なく。この玉は私がおあずかりしましょう。お嬢さんは安心して、家におかえりくださいな」
こうして少女を家に帰し、男は赤い玉を得たという・・・
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☆処女懐胎
いわゆる「処女懐胎神話」ですね
処女懐胎と言えば聖母マリアによるイエス・キリストの受胎が知られていますが、他の神話にもよく見られています
イエス・キリストの場合は人間の原罪を追っていないということを表現しているのですが、この少女が生んだ赤い玉も穢れが無いことを表しているのかもしれません
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