古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

古事記下巻

允恭天皇

第18代反正天皇が崩御された後、反正天皇の同母弟のオアサマツマが次代の天皇に推挙された。 オアサマツマは「自分は病気がちで身体が弱い。とても皇位を受け継ぐことはできない」と辞退した。 しかし皇后や重臣たちの強い願いによって皇位を継ぐことにした…

ミズハワケ、天皇に会える

反逆者スミノエを策略を用いて誅殺し、実際にその手を下したソバカリを自ら斬ったミズハワケ。天皇がいる大和に上ってきた。 大和に入ってミズハワケは 「今日はここにとどまって禊をしよう。そして明日、陛下が滞在されている石上神宮に参詣しよう」 と言っ…

ミズハワケの信義

ミズハワケはソバカリを率いて大和へ戻っていた。 その道々、ミズハワケは考えていた。 ソバカリは私にとっては大きな功績があった。 しかし自分の主君を殺した。これは義に反することである。こんな奴を臣下にすると、将来自分に何されるかわからない。 一…

スミノエ殺害を命じる

石上神宮に逃げてきた天皇に会いに行くも、反逆者のスミノエのように謀反の心を持っているのでないかと疑われたミズハワケ。謀反の心なければスミノエを誅殺しろ、と天皇にいわれ、難波に戻ってきた。 さて、スミノエを誅殺しろといっても、単身どうするか。…

天皇に会えないミズハワケ

弟のスミノエの謀反で難波の宮を焼かれ、臣下のアチに助けられて大和の石上神宮(いそのかみじんぐう)まで逃げてきた天皇。 石上神宮に滞在している天皇のもとに、ミズハワケが訪ねてきた。天皇の同母弟である。 ミズハワケは身長九尺二寸半(約185cm)の堂…

当岐麻道を行く

スミノエの謀反で難波宮に火を放たれ、危うく殺されるところだった天皇。臣下のアチの機転により助けられ、大和を目指して逃避行を行っていた。 天皇とアチの二人は、波邇布坂(はにうざか)まで来た。後ろを振り返ると、難波宮は猛火に包まれ、辺りは赤々と…

弟が謀反を・・

宮中で酔いつぶれて寝てしまった天皇。しかし目を覚ますと、真っ暗な山奥だった。そばにいた男は、自分は臣下のアチでここは丹比野(たじひの)だと答えた。 「ア・・・アチか。一体これは、どうしたというのだ」 「はい、陛下・・実は弟君のスミノエさまが…

酒に酔って、目を覚ますと・・

仁徳天皇の崩御後は、御子のイザホワケが皇位を継いだ。第17代の履中天皇である。 さて、天皇が即位して間もないころのことである。難波の宮では、天皇により即位後初の大嘗祭が執り行われた。それも無事に済み、宮中では恒例の饗宴が行われていた。 そして…

枯野号

これも仁徳天皇の晩年のことである。 兎寸川(とのきがわ)の西岸に一本の高い木が生えていた。その木の影は、朝日が当たれば淡路島まで届き、夕日が当たれば高安山を越えたという。 この木を切って船を建造した。その船は俊足でとても性能が良い船であった…

卵を産んだ雁

さて、税を免除し貧しさを民と分け合って「聖帝」と呼ばれたり、浮気をしては嫉妬に狂った皇后イワノヒメに攻められたりと、波乱に満ちた仁徳天皇。しかし晩年は皇后イワノヒメと穏やかな日々を送っていた。 そんな晩年の天皇はある日、日女島(ひめしま)に…

メドリの玉飾り

ハヤブサワケとメドリを追い詰め、誅殺した皇軍。皇軍の指揮をとっていた将軍はオオタテだった。 オオタテは斬られたメドリの体から、腕に巻かれていたきれいな玉飾りを戦利品として取った。 そして自分の妻にその玉飾りを与えたのである。 さて、その後、新…

隼と雀

天皇はメドリをあきらめ、宮に帰っていった。 その後、ハヤブサワケが帰ってた。 メドリは何を考えたか 「ひばりは天を高く飛びますが、はやぶさ はさらに高い空を悠然と飛んでいます。はやぶさほどの力があれば、さざき(すずめ)など簡単に討ち取れるでし…

はやぶさは飛んでいく

さて、ヤタノヒメをめぐる皇后イワノヒメとの騒動に、さすがに天皇も懲りた・・・ ・・・かと思いきや、そうでもなかった。 天皇は次に、ヤタノヒメの妹のメドリを后にしようと考えたのである。そして自分の異母弟のハヤブサワケにメドリを迎えに行くよう命…

三度変わる虫

天皇の命を皇后に伝えようと雨の中這いずり回るクチコ。それを見た皇后の侍女でクチコの妹のクチヒメと、家の主人ヌリノミは、そっとクチコを屋敷の中に招き入れた。 そしてここで、クチコとクチヒメ、ヌリノミの三人は話し合った。このままでは皇后は意固地…

皇后に会えないクチコ

大雨の中、ヌリノミの屋敷にたどり着いたクチコ。早速正面玄関に赴き、天皇からの口上を伝えようとした。 しかしその様子を察した皇后、表には出てこず、裏のほうへ入っていった。 クチコはすぐに大雨の中、裏口のほうに回る。すると皇后は今度は表に回るの…

クチコを遣わす

天皇がヤタノヒメを宮中に招き入れたと知った皇后、怒り狂って紀伊の国から船で運んできた御綱柏(みつながしわ)をみんな捨ててしまった。 そして皇后は、難波の宮には戻らなかった。 舟に乗ったまま淀川を登り、山城の国まで行き、木津川を上っていったの…

皇后の居ぬ間に・・・

その後、皇后イワノヒメは新嘗祭の準備のため、御綱柏(みつながしわ)の採取をしようと木の国(紀伊国)に来ていた。 さあ、その間に天皇は宮中にヤタノヒメを招き入れたのである。 御綱柏を積んだ皇后の御船が、木の国から帰ってきて難波の港に入った時だ…

天皇、クロヒメのもとへ

天皇は逃げられたクロヒメにどうしても会いたかった。しかし、少しでも天皇がそんなそぶりを見せると、イワノヒメの怒りが炸裂する。 天皇は「淡路島へ巡行に行く」とイワノヒメに言って、宮中から出かけていった。 そして淡路島に着いたとき、はるか海原を…

イワノヒメ、嫉妬する

仁徳天皇の皇后をイワノヒメと言った。 このイワノヒメが、なかなかものすごい嫉妬の持ち主だった。 身分が高い男は複数の妻を持つことが普通だったこの時代に、天皇がちょっとでも他の女性に手を出すと手足をばたつかせて暴れたのである。 このため天皇が召…

税を免除する

村の家々から炊事の煙が立っていないのを見て、民の窮乏を嘆いた天皇。 そして天皇は 「これより3年間、一切の租税及び労役を免除する」 と勅令を出した。 この報を聞いた日本の民、大喜びだった。 「天子様が向こう3年間、一切の租税を免除してくださるだと…

炊事の煙が・・

第16代仁徳天皇ことオオサザキ。 即位後、大和から難波の高津の宮に遷都した。 祖母の神功皇后が新羅・百済を日本の勢力下におさめ、父の応神天皇は両国から大陸の文化を取り入れていた。祖母・父の外交政策を受け継いで日本を発展させるには、港に近い難波…