宮中で酔いつぶれて寝てしまった天皇。しかし目を覚ますと、真っ暗な山奥だった。そばにいた男は、自分は臣下のアチでここは丹比野(たじひの)だと答えた。
「ア・・・アチか。一体これは、どうしたというのだ」
「はい、陛下・・実は弟君のスミノエさまが謀反を起こし、陛下のお命を狙って難波の宮に火をつけたのです。スミノエさまの不穏な動きを感じた私は、火が回る前に陛下を裏手からお救いし、馬にお乗せしてここまで来たのです」
「なに・・・スミノエが・・」
スミノエは同母の弟であるが、たびたび自分が皇太子にならなかったことを根に持っているという話は聞いていた。
アチは指さして言う
「ご覧ください、もう難波の宮は猛火に包まれています」
アチが指さしたほうを見ると、燃え盛る巨大な炎で空は真っ赤に染まっていた。
「アチ、助けてくれたのか。感謝するぞ。
しかし丹比野で寝るとわかってたら、夜具の一つも持ってきていたのにな・・」
「陛下!のんきなこと言ってないで、急いで大和へ逃げますぞ!」
二人は闇の中、大和を目指して連れ立っていった。
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