スミノエの謀反で難波宮に火を放たれ、危うく殺されるところだった天皇。臣下のアチの機転により助けられ、大和を目指して逃避行を行っていた。
天皇とアチの二人は、波邇布坂(はにうざか)まで来た。後ろを振り返ると、難波宮は猛火に包まれ、辺りは赤々と照らされていた。
「ああ、宮がが燃える・・周りの家々も・・妻の家も・・」
天皇は嘆いた。
「やむを得ません。先を急ぎましょう。追手が来るかもしれません」
アチは天皇を急き立て、闇の中を進んでいった。
二人は大坂の山の口に至った時、向こうから一人の女性が歩いてきた。女性は2人を見てただならぬものを感じたのだろう、二人に話しかけてきた。
「あの・・お身分の高い方とお見受けしましたが・・大和に行かれるのですか」
アチが答える。
「ああ、そうだが・・何か?」
「この先の道に、武装した集団が陣取っていました。この道は通らずに、当岐麻道(たぎまみち)を通っていったほうがよろしいかと思われます」
「なに、本当か!?・・・スミノエが、手を回したんだな・・ありがとう、よく知らせてくれた!
・・陛下!お聞きの通りです。遠回りですが、当岐麻道(たぎまみち)のほうへ廻っていきましょう」
こうして二人は当岐麻道を通って大和にたどり着くと、石上神宮に入りそこに滞在することにした。
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☆波邇布坂
難波と大和を結ぶ日本最古の官道「竹内街道」(たけのうちかいどう)の埴生坂(はにゅうさか)とされます。古代の重要な交易路でした。
☆当岐麻道
当岐麻道は前述の竹内街道のことです。
大坂の山の口とは現在の羽曳野市飛鳥とされています。
石上神宮へ急ぐ天皇とアチは、ここから近道の穴虫峠(現在の一般地方道703号、近鉄南大阪線に沿う道)へ向かおうとしましたが、軍勢が待ち構えていると言われて竹内峠(現在の国道165号)へと進んでいったものと思われます。
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