その後、皇后イワノヒメは新嘗祭の準備のため、御綱柏(みつながしわ)の採取をしようと木の国(紀伊国)に来ていた。
さあ、その間に天皇は宮中にヤタノヒメを招き入れたのである。
御綱柏を積んだ皇后の御船が、木の国から帰ってきて難波の港に入った時だった。
難波の津では、宮廷に出仕していた吉備の児島出身の男が、任期を終えて故郷に帰ろうと、帰りの船を待っていた。そこに、遅れてきた皇后付きの侍女にばったり会った。侍女は皇后を迎えるために港まで出向いてきていたのである。
男は、その女が皇后の侍女とは知らずに話しかけた。
「天皇陛下は今ごろ、ヤタノヒメさまを宮中に招き入れて、昼夜いいことしてるさ。全くいいご身分だね、天皇というのは」
「え、陛下が・・ヤタノヒメさまと・・」
「ああ、そうさ。皇后が知らないのをいいことにね。
まあ、あの嫉妬に狂った皇后が聞いたら、もう火のように怒るだろうな。あっはっは」
男は船に乗って去っていった。
遅れて皇后の御船がはいって来た。皇后を迎えた侍女は、さっきの話をつぶさに皇后に伝えてしまった。
・・・・
・・・さあ、皇后の怒りようは、想像するに余りある・・・
皇后は積んできた御綱柏を、そこにみんな投げ捨ててしまった。
御綱柏を捨てたその地を、後世、御津前(みつのさき)というようになった。
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☆御津前
現在の大阪市中央区心斎橋付近と言われており、御津八幡宮や御津公園にその名を残しています。
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