古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ミズハワケの信義

 

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ミズハワケはソバカリを率いて大和へ戻っていた。

その道々、ミズハワケは考えていた。

 

ソバカリは私にとっては大きな功績があった。

しかし自分の主君を殺した。これは義に反することである。こんな奴を臣下にすると、将来自分に何されるかわからない。

一方で私のために成しえた功績に報いないのは、また信に反することである。その信に報いないわけにはいかない・・・

よし、いったんその信に報いた後で、ソバカリを殺してしまおう・・・

 

そして大坂の山の口に着いたとき、ソバカリに言った

「今日はここに泊まろう。まずそなたに大臣の位を授ける。そして明日、大和へ上っていこう」

 

ミズハワケは近隣の豪族に招集をかけた。人望の厚いミズハワケのもとには多くの豪族が集まった。

その地に仮宮を設営した。そして見せかけの祝宴を開き、豪族たちの前でソバカリを大臣に任命した。

 

ソバカリは自分の願いがかなったと大喜びだった。

ミズハワケはソバカリに顔が隠れるほど大きな杯を渡し、そこに自ら酒を注いだ。

ソバカリはいい気分で酒を飲もうと杯に口をつけ、杯を傾ける。そして杯で顔が覆われた。

 

その時だった、

 

ミズハワケは敷物の下に隠していた太刀を取り出し、一瞬のうちにソバカリの頸をはねたのだった。

ミズハワケは

「これでソバカリの信義にも報いた。大和に向けて、明日出発しよう」と言った。

 

その地を後に近飛鳥(ちかつあすか)というようになった。

 

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☆ごちゃごちゃと屁理屈を・・・

 

ミズハワケは述べてますが、何のことは無い、要するに自分に都合のいいようソバカリを利用して用済みになったら殺してしまった、ということ。

 

☆近飛鳥

 

「明日行こう」と言ったからアスカ・・

 大坂の山の口、すなわち近飛鳥と言えば、履中天皇が穴虫峠を行こうとすると、軍勢が待ち構えているから竹内峠を行きなさいと言われた地です。

 現在の大阪府羽曳野市飛鳥と言われています。大和の「遠飛鳥」(とおつあすか)に対して当時の都である難波宮に近いので「近飛鳥」と呼ばれました。

 

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