村の家々から炊事の煙が立っていないのを見て、民の窮乏を嘆いた天皇。
そして天皇は
「これより3年間、一切の租税及び労役を免除する」
と勅令を出した。
この報を聞いた日本の民、大喜びだった。
「天子様が向こう3年間、一切の租税を免除してくださるだとよ。ここのところ不作続きで米が取れなかったから、助かるな」
「労役にも出なくていいそうだ。その分、田畑で働くことができるぞ」
「まことにありがたいことよ。天子様には、どんなに感謝してもしきれねえな」
民は一生懸命自分たちの仕事に精を出した。
しかし、税が入ってこなければ、困るのは朝廷である。
皇居の壁は崩れ、屋根には穴が開く。雨漏りもひどいものだった。
しかし、民からの労役がなく、租税も入ってこない状況では、修理もままならない。雨漏りするところには箱を置いて雨を受けた。天皇は雨漏りしない部屋に移ってしのいでいた。
着物は破れ、毎日食べるものと言えば雑穀ばかりの日々が続いた。
そして3年、天皇はまた高い山に登り、村々を見渡していた。そこには黒々と太い煙が立つ家々があった。
天皇はまた勅令を発した。
「国中、豊かになったようだ。これより3年前と同じように租税を納め、労役を果たすように」
そして民は「天子様のために」とこぞって皇居の修理に赴いた。その年は米もたくさん穫れて、朝廷には続々と作物が届けられた。
こうして国の百姓(おおみたから)は富み栄えた。
後世、その御代を称えて聖帝(ひじりのみかど)の世というようになった。
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☆かまどの煙
仁徳天皇の逸話としてよく知られています。
その伝統は脈々と受け継がれてきました。
昭和天皇は敗戦に打ちひしがれた国民を励まして回り、その際、列車内に泊まられたこともあったそうです。東日本大震災の時、当時の天皇であった上皇陛下が計画停電に合わせて皇居内の電気もすべて消したという話もよく知られています。
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