さて、税を免除し貧しさを民と分け合って「聖帝」と呼ばれたり、浮気をしては嫉妬に狂った皇后イワノヒメに攻められたりと、波乱に満ちた仁徳天皇。しかし晩年は皇后イワノヒメと穏やかな日々を送っていた。
そんな晩年の天皇はある日、日女島(ひめしま)に巡行に出ていた。すると天皇の目の前に雁が降りてきて、卵を産んだのだ。
その様子を見た天皇は、そばにいた建内宿祢に尋ねた。
「そなたは世の中で一番の長寿者であるな。そなたは日本の国で雁が卵を産むということを見たことあるか?
雁は夏の間、遠い北の異国で卵を産むはずだが」
「陛下、私は長い間世の中を見てまいりましたが、日本の国で雁が卵を産むというようなことは、聴いたことがございません」
建内宿祢はかしこまって答えた。
景行天皇から仁徳天皇まで5代にわたり皇室に仕え、寿命300年を超えたと伝説に残る建内宿祢でも見たことないようだった。
しかしさすが長寿者、天皇の心を察した彼は、次のように付け加えた。
「これはとても縁起が良いことでございます。陛下の御子は子孫代々、日本の国を統治なさいます。
そのしるしとして、陛下の目の前で卵をお産みになったのでしょう。卵には子孫繁栄の象徴と昔から伝えられております。」
「うむ、そうか・・それに民も代々続く・・百姓(おおみたから)が繁栄するためのまつりごとをこれからも続けていかねば・・」
天皇は若かったころの、かまどに煙が立ってなかった国の惨状を思い出し、日本の国の発展を改めて祈っていた。
前<<< メドリの玉飾り - 古事記の話
次>>> 枯野号 - 古事記の話
古事記上巻 日本神話 目次
古事記中巻 神武天皇~応神天皇 目次
古事記下巻 仁徳天皇~推古天皇 目次
☆日女島
古代、大阪湾にあった島で、現在の大阪市西淀川区姫島とされています。
≪リンク≫
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
古事記ゆかりの地を訪ねて