古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

隼と雀

 

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天皇はメドリをあきらめ、宮に帰っていった。

 

その後、ハヤブサワケが帰ってた。

メドリは何を考えたか

「ひばりは天を高く飛びますが、はやぶさ はさらに高い空を悠然と飛んでいます。はやぶさほどの力があれば、さざき(すずめ)など簡単に討ち取れるでしょう。

ハヤブサワケさま、ここはあなたの力で、天下を取ってみませんか」

と言った。

 

悪いことにハヤブサワケもその気になって、本気で皇位を狙う画策を始めたのである。

 

ハヤブサワケにしてみれば、天皇の后となるはずのメドリが自分の妻となったことで、天皇が報復してくるのではないかという疑心暗鬼があった。天皇が何かしてくる前に自分から・・という気持ちがあったのだろう。

 

さて、ハヤブサワケの不穏な動きは朝廷の知ることとなった。

妻だけならともかく、皇位を狙われたら黙っているわけにはいかない。天皇は討伐のため、軍をハヤブサワケの屋敷に差し向けた。

 

天皇が討伐軍を向けたことを察したハヤブサワケ、メドリと一緒に屋敷を抜けだす。

二人は倉橋山まで逃げてきた。しかしそこは険しい山である。女のメドリにとっては厳しい逃避行だった。

 

二人は険しい山道を登っていく。しかしついにメドリは動けなくなった。

 

ハヤブサワケ様・・もう、先に逃げてください・・・」

「なにを言う!俺たちはいつも一緒だ」

ハヤブサワケはメドリに手を差し出す。

二人は手を取り合い、よろよろと進んでいった。

 

ハヤブサワケ様・・・申し訳・・ありません・・私が余計なことを言ったばかりに・・」

「その言葉に乗ったのは俺だ。もういい、終わったことだ。

なに、梯子をたてたように険しい倉橋山も、二人一緒ならばなんてことないさ!」

 

二人はどうにか倉橋山を越えて、宇陀の蘇邇(うだのそに)まで逃げてきた。しかしそこで皇軍に追いつかれた。

 

皇軍の兵士に斬られるその瞬間まで、二人は手を取り合ったままだったという。

 

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☆倉橋山

 

奈良県桜井市に倉橋という地名がありその周辺と言われています。不動滝近くにはハヤブサワケが逃避行の途中で詠んだ歌の歌碑が建てられています。

 

歌碑1 桜井市
歌碑2 桜井市

 

☆宇陀の蘇邇

 

現在の奈良県宇陀郡曽爾村と言われています。

 

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