古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

禊から生まれる神々

川にはいったイザナギ、身に当たる川の流れが心地よい。 イザナギが投げ捨てたものから神が産まれた。民を穢れの無い世界に導く道の神である。 また落ちた穢れからも神が生まれた。民を穢れから守る神である。 身を清めるために、川の深みに移る。そこからさ…

イザナギ、禊をする

イザナギは筑紫の島、日向の橘の小戸の阿波木原にきていた。すでに日は暮れていた。 「ああ、イザナミはもうこの世の神ではないんだ・・・」イザナギはつぶやく。 しかし、彼には日本の国を作る仕事が残っている。いつまでも落ち込んでいるわけにもいかない…

生と死

その時だった 「あ、いけない」 イザナギの目に留まったのは、必死の形相でかけてくる、イザナミの姿だった。鬼女も雷神も追いつけなかったので、自ら追ってきたのである。 そばには千人がかりでも引けないような大岩があった。イザナギは、大岩に両腕をかけ…

イザナミ、追う

イザナギは恐れおののき、たいまつを落とし一目散に逃げていく。イザナミがそれに気づかないわけなかった。 「ああ、イザナギ!あんなに私の姿を見ないでって頼んでおいたのに!悔しい!」 いうが早いか起き上がると、すぐに黄泉の鬼女に命じてイザナギを追…

イザナギ、逃げ出す

再び黄泉の宮殿を静寂が包んだ。時がたった。イザナギは待った。もう一昼夜か、それとも二昼夜は立っただろうか、くらい黄泉の国では時間の流れが全く分からない。 「ああ、もう待てん!この手でイザナミを救い出してやる!」 イザナギは戸をけ破ると、宮殿…

イザナギとイザナミ、再会する

イザナギはこの世と、死者が行く根の国との境にある、黄泉比良坂(よもつひらさか)を下りていた。下りるにしたがい辺りは暗くなっていき、不気味な闇と静けさが覆う世界となってくる。 しかしイザナギは愛するイザナミに逢いたい一心で黄泉比良坂を下りてい…

黄泉の国へ

イザナギの悲しみは、いつしか怒りに変わっていた・・・そう、愛する妻を奪った我が子、火の神・カグツチ・・・ イザナギはカグツチの前に立つと、腰に差していた剣のオハバリに手をかける・・・ カグツチは何のことかわからず、無邪気な目で父神イザナギを…

イザナミの死

神々によって生命が吹き込まれ、脈動する日本列島を見て、イザナギ・イザナミは 満足していた。イザナミはすっかり元の活発さを取り戻していた。二人は毎日、日本を理想の国にしようと話し合っていた。 そんなある日・・・ イザナミはいつものように神を生み…

イザナギとイザナミ、神を産む

イザナミは続けて数多くの小島を生んだ。 こうして国の形は出来上がった。 イザナギ・イザナミは、オノゴロ島の高台にある宮殿に立ち、周囲を見渡していた。 イザナギがイザナミに言った。 「イザナミ、よく頑張ったな。」 もうすっかり元気を取り戻したイザ…

日本が産まれる

その夜、神殿の庭では桜を伐った薪が積まれていた。そこに火がつけられた。薪が燃え上がる。 アメノミナカヌシはその火に近づくと、うやうやしく鹿の骨を取り出し、火の中に入れた。 イザナミ・イザナギ、造化三神、その他八百万の神々がかたずをのんで見守…

なぜ・・・

イザナミは、最初の元気はどこに行ったのか、とても落ち込んでいた。無理もない、がんばって産んだ子が得体のしれぬ、形なきものだったのだから。 そんなイザナミを、イザナギは一生懸命励ましていた。 「おい、イザナミ、元気出せよ!子供ならまた作ればい…

イザナギとイザナミ、結婚する

イザナギ・イザナミの二柱の神はオノゴロ島に降り立った。そこには草も木も、何もない。しかしイザナギ・イザナミは希望に燃えていた。とくにイザナミの女神は大はしゃぎだ。 「ねえ、イザナギ、一緒に頑張って、豊かな国を作ろうね」 「うむ、しかしまず、…

オノゴロ島

一刻後、イザナギ・イザナミは天の浮橋に立っていた。ここからなら下界がよく見える。 そこは海も陸もない、一面ただドロドロしたものが広がっている世界だった。 イザナギ・イザナミは2人で天沼矛を持っていた。 「じゃ、いくよ、いいかイザナミ!」 「大丈…

イザナギとイザナミ、天沼矛を受け取る

高天原は形が定まり神々が集まってきたが、まだ地はというと、海も陸もない。ただドロドロしたようなものが漂っているだけだった。 ある時、造化三神のアメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビは地をかため、国を作りたいものだと考えた。そこで、話し合…

神々が生まれる

何もない混沌とした世界から天と地が分かれ、しかしまだ固まらず、世界は水に浮く油にのように、また海に浮かぶクラゲのように、ふわふわと漂っている状態であった。 しかしそんな世界からでも、時がたつにつれ葦の芽が成長するように力強く、次々と神が生ま…

造化三神

はるかな昔、天も地も、光も影もなく、すべては混沌としていた。 そんな何もない世界の中で、はじめて神が生まれた。 生まれた神はアメノミナカヌシ、世界の中心根源となる神である。