高天原は形が定まり神々が集まってきたが、まだ地はというと、海も陸もない。ただドロドロしたようなものが漂っているだけだった。
ある時、造化三神のアメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビは地をかため、国を作りたいものだと考えた。そこで、話し合った結果、末っ子のイザナギ・イザナミにその任を任せることにした。
合議の場にイザナギとイザナミを呼ぶと、話し合いの内容を伝え国づくりを命じた。
「え・・・国造り・・って言ったって、どうすればいいんですか?」
アメノミナカヌシは、一本の矛を取り出して言った。矛は勾玉で飾られ、不思議な光を放っていた。
「ここに天沼矛(あめのぬぼこ)がある。これを持っていきなさい。」
「え・・・でも・・・」
「まあ二人で手を伸ばして、この矛を受け取ってみなさい」
そこで二人は一緒に手を伸ばし、二人で矛を受け取った。するとどうだろう、神々の力が込められたその矛を受け取った瞬間、二人は全身に何とも言えないエネルギーが満たされていくのを感じた。
イザナギ・イザナミは見つめあい、笑顔を交わす。矛を手にすると、造化三神の神々に一礼し、退出した。
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☆天沼矛
古事記では「天沼矛」ですが、日本書紀では「天之瓊矛、瓊は玉の意味でヌと読む」と註釈つきで記載されています。すなわち天沼矛というのは玉で飾られた矛、となります。
矛というのは幅広で両刃の刃先を持つ武器ですが、日本では武器というよりも祭具として用いられるようになりました。
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