古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

イザナミ、追う

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イザナギは恐れおののき、たいまつを落とし一目散に逃げていく。イザナミがそれに気づかないわけなかった。

  

「ああ、イザナギ!あんなに私の姿を見ないでって頼んでおいたのに!悔しい!」

いうが早いか起き上がると、すぐに黄泉の鬼女に命じてイザナギを追わせた。

 

身軽な鬼女の足は速い。みるみる追いつかれていく。

「えい、これでも食ってろ!」

イザナギは髪を結んでいたカズラをほどいて投げた。すると髪飾りは山ぶどうの蔓に変わった。鬼女はむしゃむしゃ食っている。その間にイザナギは逃げたが、食い終わった鬼女はたちまち追いついた。

 

「えい、これでどうだ!」

イザナギは髪につけていた竹櫛をバラバラにして投げた。すると竹櫛は林立する筍に変わった。鬼女はまたむしゃむしゃ食っている。

 

「もう、鬼女ども、何やっているのよ!」

業を煮やしたイザナミは、今度は自分の体に取りついていた雷神を追ってに差し向けた。今度は食べ物で釣るのは通用しない。イザナギは剣を取り、後ろ手に追い払いながら、やっとのことで黄泉津比良坂まで逃げてきた。

 

坂のわきに桃の木が生えていた。桃を3個ちぎり投げると、雷神は退散していった。

「ああ、桃よ、ありがとう。私を助けてくれたように日本の民が苦しんでいるときは助けてくれよ」と桃の木をさすりながら言った。

 

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古事記の話 目次

 

 

☆桃

 

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桃は支那が原産ですが、日本には縄文時代から伝わっていたようです。

 

支那では邪気を払い不老長寿を与える果物とされてきました。その考えは日本にも伝わり、古事記のこの記述は桃に霊力があると考えられていた証とされています。

 

桃から生まれた桃太郎の鬼退治は現代でも昔話の代表選手です。

旧暦の3月3日は桃の花が咲くころです。この日は「桃の節句」として女の子の健やかな成長が祈られてきました。

 

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