イザナギ・イザナミの二柱の神はオノゴロ島に降り立った。そこには草も木も、何もない。しかしイザナギ・イザナミは希望に燃えていた。とくにイザナミの女神は大はしゃぎだ。
「ねえ、イザナギ、一緒に頑張って、豊かな国を作ろうね」
「うむ、しかしまず、何から手を付けたらいいんだろう」
「そうね・・・」
「とにかくイザナミ!まずはぼくらの落ち着くところが必要だよ!ぼくらの家を建てよう」
「あ、そっか」
そして二人は神が住むにふさわしい立派な宮殿を建てた。何しろ二人には天沼鉾から授かった天の神々の力を持っている。何もないところから宮殿を建てるぐらい朝飯前である。
さて、二人が住む宮殿は出来上がった。
「わー、イザナギ!すごい!きれいなおうちができたね!」
イザナミの女神は喜び一杯だった。そんな女神を見て、イザナギは心から愛おしいといつしか思うようになっていった。
そしてイザナギが言った
「イザナミ、ぼくと君の体、似ているようだけどなんかちょっと違うね」
「ええ、私の体には、あなたの体にあるものがないわ・・・まだでき足りないのかしら」
「そうだね・・・多分、ぼくの体はでき過ぎちゃったんだろうな・・・どうだろう、君の体の足りないところとぼくの体のできすぎたところとを合わせてみたら・・・何かいいこと、ありそうな気がするんだけど・・・」
そういって、イザナミの目をじっと見つめた。
「え・・・」
イザナミはうれしさと興奮と戸惑いが入り混じったような目でイザナギを見つめ返す。
「ええ・・・いいわ・・・」
しばしの沈黙の後、イザナミが答えた。
イザナギは言った。
「よし、じゃあ結婚しよう。」
「でも、どうするの?」
「二人で立てた宮殿には天に通じる太い柱がある。その周りをお互い廻って、愛を誓いあうんだ!」
「ええ、わかったわ」
二人は柱の前に立った。
「イザナミ、君は右から廻るんだ。ぼくは左から廻る」
そして太い柱を廻り、二人は手を取り合った。
イザナミは興奮して言った
「ああ、なんて立派なひとなの・・・」
続いてイザナギが言った
「なんてきれいなひとなんだ・・・」
そのまま二人は熱い口づけを交わし、初夜を迎えた。
しばらく日が経ち、イザナミは子のヒルコを産んだ。しかしまるでヒルのような手足が立たない子供だった。この子は葦の船に乗せて流してしまった。
次にアワシマを生んだ。アワシマもその名のごとく泡となって消えてしまった。
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☆西宮神社
イザナミは妊娠しましたが、産まれたのは先天性の障害児だったので遺棄してしまいます。
「何てひどいことを・・・」なんて現代人の感覚で語っても仕方ありませんね。古代の神話なのですから。
さて、海に流されたヒルコ。現在の兵庫県西宮に流れ着き、西宮神社に祀られています。毎年1月10日に境内を全速力で走る男たちの姿がテレビで中継される、西宮のえびすさんですね。
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