神々によって生命が吹き込まれ、脈動する日本列島を見て、イザナギ・イザナミは
満足していた。イザナミはすっかり元の活発さを取り戻していた。二人は毎日、日本を理想の国にしようと話し合っていた。
そんなある日・・・
イザナミはいつものように神を生み出そうとしていた。しかし、どうも様子がおかしい。
イザナミは苦しそうに唸っている。
「おい、イザナミ、どうした?」
イザナギは心配して駆け寄った。
「熱い・・・」
「え?」
イザナミのか細い声が聞こえたかと思うと、周りがパッと明るくなった。そして熱くなった。イザナギは何が起こったのか、理解できなかった。
一瞬後、下半身に大やけどを負い、瀕死で横たわっているイザナミを見つけた・・・
「イザナミ!」
慌ててイザナミを抱き起す。
「イザナギ・・・」
「いったい何が・・・」
横には、火の神・カグツチが立っていた・・・
イザナギは理解した。
そう、イザナミは火の神を生んだのだ。しかし自ら産んだ子により大やけどを負ってしまったのだ。
「イザナギ・・・ゴメン・・・」
「いや、いいから・・・早く体を治して、また一緒に日本の国を作るんだ!」
しかしイザナミの苦しみようはとても正視できないほどだった。嘔吐し、尿便も垂れ流しだった。吐瀉物から、尿便からまた神が生まれる。金属の神、製陶の神、農業の神・・・
イザナミはもう話すことさえできなくなっていた。
「イザナミ!」
イザナギは看病しながら必死で呼びかける。
瞬間、イザナミの目が開き、口元が動いたようだった。
「イザナギ・・・ありがとう・・・」
そう言ってるようだった。
イザナギは必死に呼びかける。しかし、もはやイザナミは目を覚ますことは無かった。
「イザナミー!」
「イザナミ・・・ああ、イザナミ・・・愛する妻・・・火の神を生んだばかりに・・・」
イザナミのなきがらの横で、イザナギはいつまでも泣いていた。泣いた涙からまた神が生まれた。涙の神、ナキサワメである。
泣きながら、イザナミの遺体を抱きかかえたイザナギは、出雲と伯耆の境、比婆山に来ていた。そこに丁寧にイザナミの遺体を葬った。
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☆比婆山
比婆山と言えばヒバゴンが出るという広島県庄原市の比婆山が思い浮かびます。
ここにもイザナミ陵墓の伝承地がありますが、他にも島根県安来市の比婆山などいくつか伝承地が存在しています。
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