その夜、神殿の庭では桜を伐った薪が積まれていた。そこに火がつけられた。薪が燃え上がる。
アメノミナカヌシはその火に近づくと、うやうやしく鹿の骨を取り出し、火の中に入れた。
イザナミ・イザナギ、造化三神、その他八百万の神々がかたずをのんで見守っている。
闇の中、火は勢いよく燃えていた。
その時、ぴしっ!という甲高い音が響いた。
アメノミナカヌシが入れた鹿の骨が、勢いよく燃える火にあぶられてひびが入ったのだ。
アメノミナカヌシは、そのひびの形を見ていった。
「イザナギ、イザナミ。君たちが結婚した日のことを思い出してごらん。女神のほうから先に声をかけなかったかい?」
「そういえば・・・」
そう、オノゴロ島の宮殿で柱を廻って愛を語るとき、イザナミはうれしさで興奮して先に「ああ、なんて立派なひとなの」と言っていた。
「それがよくなかったんだよ。戻ってもう一度、結婚式をやり直すんだ。男神のほうから声をかけるよう気を付けるんだよ」
イザナギ・イザナミは再びオノゴロ島に戻り、最初やった時と同じように柱を廻って手を取り合った。
イザナギが口を開いた「なんてきれいなひとなんだ・・・」続けてイザナミが言う「なんて立派なひとなの・・・」
そのまま二人は熱い口づけを交わし、2度目の夜を迎えた。
時がたった。淡路之穂之狭別島(淡路島)が生まれた。続けて伊予二名島(四国)、隠伎三子島(隠岐)、筑紫島(九州)、伊伎島(壱岐)、津島(対馬)、佐渡島(佐渡)、大倭豊秋津島(本州)が続けて産まれた。
この八つの島が産まれたことによって、以後日本のことを大八島国というようになった。
前<<< なぜ・・・
次>>> イザナギとイザナミ、神々を産む
☆筑紫神社
ここでいう筑紫島は九州のことです。
「筑紫」の発祥の地は筑紫野市の筑紫神社と言われています。