古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

高天原を追放される

わたしのせいで一人の女神が死んだ。姉神アマテラスは天の岩屋にこもり、高天の原も地上の日本も真っ暗になった。日が照らないので作物は育たず、疫病は流行しているという。 これを聞いたとき、さすがに私の心も少し傷んだ・・ちょっとやりすぎたか・・ し…

捕らえられた

わたしは姉神アマテラスと女神たちが機織りをしている小屋に、皮をはいだ馬を投げ込んだ。 それから間もなくして・・・まだ昼間だというのに、突如空が真っ暗になった。どうしたというのだ・・・ その時だった。神殿にいた私のところに、大勢の神々がやって…

機織り小屋に・・

その日、アマテラスは機織り小屋に入っていた。大勢の機織りの女神も一緒だった。 アマテラスと女神たちは、神聖なる神衣を織っていたのだ。 中からはキッコーン、カコーンと、調子よく軽やかに、機織り機の音が響いてくる。 わたしはその機織り小屋に、そー…

高天原で・・・

わたしは姉アマテラスとのうけいで美しくしとやかな女神を産み、わたしの潔白は証明された。 姉が統治する高天原を乗っ取る気は無いと、アマテラスにわかってもらえたのだ。 気をよくしたわたしは、しばらくこの高天原に滞在することにした。 高天原は地上の…

潔白が証明された

わたしと姉アマテラスは、こうして天の安河をはさんで子を産んだ。 わたしがアマテラスにわたした剣からは三人の女神が産まれ、アマテラスから私にわたされた勾玉からは五人の男神が産まれた。 わたしは「しめた!」と思った。 剣はわたしのものであった。そ…

5人の男神が生まれた

つぎはわたしの番である。 わたしはアマテラスに言った 「では姉上、わたしは姉上が身に着けている勾玉をもらいましょうか」 アマテラスは左の髪、右の髪、頭の上、右手、左手から、それぞれ身につけていた勾玉を外すと、わたしに手渡した。 わたしは受け取…

女神を産んだ

こうしてわたしとアマテラスは、互いにうけい(誓約)を行って子を産むこととなった。 「え?なんのこっちゃ?」と思うだろう。確かに人の世となった現代ではありえない。 しかしはるかな昔、神代のことである。やろうと思えば男だろうが女だろうが、単独で…

うけい

「スサノオ!何しに来たのです!?答えなさい!」 姉のアマテラスは鬼気迫る迫力で尋ねる。いや、訪ねるというよりも、雄たけびだ・・ さしものわたしも、たじたじとなって答えた。 「姉上!・・・わたしは曲がった心は持っておりません! 父の大神に、母の…

高天原へ昇る

父神に勘当されたわたしは、地上から高天原に向かって、天の浮橋を登っていた。 母の国に行く前に、姉のアマテラスにお別れの挨拶をしようと思ったのである。 わたしは天の浮橋をずんずん上っていった。そして、上り切って高天原に着いたとき・・ わたしは姉…

父神との決別

その日もわたしは母の姿を思い浮かべては泣いていた。 すると、突然そこに父神のイザナギがやってきたのだ。 「お前はなぜ海に行かずに泣いてばかりいる!お前のその泣き声で山は枯れ、川も海も干上がってしまった。それだけではない、邪神がその声に呼び寄…

わたしは泣いていた

わたしは父神から、海原を統治するよう命ぜられた。 しかし私は、あまり気が乗らなかった。 別に海原の統治を行うのが嫌だったわけではない。 父に対する反抗心とでもいおうか・・ 父が決めた通りにするのが嫌だったのだ。 姉と兄は、父に命ぜられた通り、す…