古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

父神との決別

 

f:id:karibatakurou:20201222055722p:plain

 

その日もわたしは母の姿を思い浮かべては泣いていた。

 

すると、突然そこに父神のイザナギがやってきたのだ。

 

「お前はなぜ海に行かずに泣いてばかりいる!お前のその泣き声で山は枯れ、川も海も干上がってしまった。それだけではない、邪神がその声に呼び寄せられ、民は苦しんで大変なことになっているのだぞ!」

 

・・・そんなこと知らなかった・・

でも、わたしは感情の赴くままに泣いていただけなのだ!それの何が悪いというのだ!

 

「父上!わたしは母上に会いたいのです!」

それこそ売り言葉に買い言葉、わたしは感情の向くままに、怒鳴るように父も言った。

 

その答えに父はあっけにとられていたようだった。しかし一瞬の沈黙の後、父も怒鳴るように言った

 

「だめだ!イザナミはもう死んだんだ!現生の神は死者に会いに行くことはできない!そんなこともわからんのか!そんなことより早く海原を治めに行け!」

 

なぜだ・・どうして母に会うのがいけないのか・・なぜ父の言う通りの世界に行かなければならないのか・・

わたしはもはや、父の言うことなど、聴く耳は持たなくなっていた。

 

「父上!わたしはどうしても母上に会いたい!今からこの足で黄泉の国に行って、母上にあってきます!」

 

「なんだと・・・勝手にするがよい!もう知らん、黄泉でもどこにでも、勝手に行くがいい!」

 

・・・こうしてわたしは、父神と大喧嘩して、父神の神殿を飛び出していった。

それ以来、わたしは父イザナギには会っていない。

 

前<<<  わたしは泣いていた - 古事記の話

次>>>  高天原へ昇る - 古事記の話



スサノオの自伝 目次



≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話