その日もわたしは母の姿を思い浮かべては泣いていた。
すると、突然そこに父神のイザナギがやってきたのだ。
「お前はなぜ海に行かずに泣いてばかりいる!お前のその泣き声で山は枯れ、川も海も干上がってしまった。それだけではない、邪神がその声に呼び寄せられ、民は苦しんで大変なことになっているのだぞ!」
・・・そんなこと知らなかった・・
でも、わたしは感情の赴くままに泣いていただけなのだ!それの何が悪いというのだ!
「父上!わたしは母上に会いたいのです!」
それこそ売り言葉に買い言葉、わたしは感情の向くままに、怒鳴るように父も言った。
その答えに父はあっけにとられていたようだった。しかし一瞬の沈黙の後、父も怒鳴るように言った
「だめだ!イザナミはもう死んだんだ!現生の神は死者に会いに行くことはできない!そんなこともわからんのか!そんなことより早く海原を治めに行け!」
なぜだ・・どうして母に会うのがいけないのか・・なぜ父の言う通りの世界に行かなければならないのか・・
わたしはもはや、父の言うことなど、聴く耳は持たなくなっていた。
「父上!わたしはどうしても母上に会いたい!今からこの足で黄泉の国に行って、母上にあってきます!」
「なんだと・・・勝手にするがよい!もう知らん、黄泉でもどこにでも、勝手に行くがいい!」
・・・こうしてわたしは、父神と大喧嘩して、父神の神殿を飛び出していった。
それ以来、わたしは父イザナギには会っていない。
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