こうしてわたしとアマテラスは、互いにうけい(誓約)を行って子を産むこととなった。
「え?なんのこっちゃ?」と思うだろう。確かに人の世となった現代ではありえない。
しかしはるかな昔、神代のことである。やろうと思えば男だろうが女だろうが、単独で、その場ですぐに子を産むことができたのである。
まあわたしやアマテラスだって、母はなく、父のイザナミから生まれてきたのだから・・・
そして、わたしとアマテラスは、高天原を流れる天の安河を挟んで向かい合った。
八百万の神々が見守る中、冷たく張り詰めた空気が流れる。
おもむろにアマテラスが言った。
「まずはそなたの剣を渡しなさい」
わたしは腰から剣を外すと、それを両手に持ち、頭上に捧げてアマテラスに差し出した。
アマテラスはわたしから剣を受け取ると、それを三つに折った。パキン、パキンと乾いた高い音が響く。そして折ったを神聖なる天の真名井の水ですすぎ清める。
清めたあと、アマテラスはその剣を口に含んだ。そしてかみ砕いたかと思うと、それを吹き出した。
アマテラスの口から吹き出されたわたしの剣は、瞬く間に霧のように広がった。辺りは乳白色の霧に包まれ、何も見えなくなった。
・・・そして霧が晴れると・・・
そこに、三人の美しい女神が産まれていた。
この時産まれた女神、タキリヒメ・イチキシマヒメ・タキツヒメは、後に宗像三神と呼ばれるようになる。
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☆宗像三神
宗像三神は、福岡県の宗像大社に鎮座されています。
古事記によると、長女タキリヒメが玄界灘に浮かぶ沖ノ島の沖津宮に、次女イチキシマヒメが大島の中津宮に、三女のタキツヒメが九州本土の辺津宮に、それぞれ鎮座されております。
(日本書紀や、日本書紀の中でも本文と別伝(一書/あるふみ)では、出生順や鎮座地、神名が微妙に異なっています)
宗像の地は瀬戸内・関門海峡から大陸に渡る重要な中継点であり、この地を支配した宗像氏は絶大な権力を持ってました。
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