父神に勘当されたわたしは、地上から高天原に向かって、天の浮橋を登っていた。
母の国に行く前に、姉のアマテラスにお別れの挨拶をしようと思ったのである。
わたしは天の浮橋をずんずん上っていった。そして、上り切って高天原に着いたとき・・
わたしは姉、アマテラスの手荒い歓迎を受けたのである。
アマテラスは髪を解いて、その髪をみずらに結っていた。みずらとは昔の男の髪型で、当時の成年男性は皆、髪をみずらに結っていた。そのみずらにも、左右の手にも玉飾りを何重にも巻き付けていた。そして鎧を着込み、弓を持ち、何本も矢が入った竹筒を背負っていた。
完全に敵と戦う時の格好だ・・・わたしを敵とみなしているのか・・
さすがのわたしもたじろいだ・・アマテラスはわたしをにらみつけ、何も言わない。
「姉上・・・どうなさったですか、そのお姿・・」
わたしはおずおずと尋ねた。
「天の浮橋をそなたが乱暴に上ってきたので、天も地もグラグラ揺れましたよ!自分でわからなかったのですか!
どうせ乱暴者として名が高いそなたのことだ、ここに来たのは良き心ではないでしょう!」
そういうと、アマテラスは一歩前に出た。その勢いに足は地にめり込み、土煙は淡雪のごとく舞い上がった。
「スサノオ!何しに高天原に昇ってきたのです!? 答えなさい!」
アマテラスはわたしに尋ねる。いや、訪ねるというよりも、雄たけびと言っていいほどの迫力だった・・・
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☆天橋立
神代のころ、地上の「葦原の中つ国」(日本)と天上の「高天原」との間には「天の浮橋」がかかっていて、神々は天の浮橋を伝って天と地上の間を行き来していました。
京都府宮津市の「天橋立」は天の浮橋が倒れてできたと云われています。
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