オモイカネの自伝 17
わたくしの名はオモイカネ。高天原でアマテラス大御神に仕えております。
アマテラス大御神が天岩屋に籠った騒動も収まり、世の中に光が戻りました。そして数百年もたったころでした。
高天原から地上を見ていたアマテラス大御神が仰せになりました。
「オモイカネ・・・日本の国は今、オオクニヌシが統治しておりますね・・」
わたくしは
「はい、さようでございます。オオクニヌシのもと、日本の国はたいそう繁栄しているそうでございますが・・・」
と、答えました。
アマテラス大御神の仰せの通り、地上の日本はオオクニヌシが支配しております。
オオクニヌシとは、アマテラス大御神の弟君でいらっしゃいますスサノオの大神の6代目の子孫であります。とても情け深く、日本の民からはたいそう慕われているそうであります。
アマテラス大御神は続けて仰せになりました。
「しかし、その繁栄も日の光があってこそなのです。葦が豊かに茂り、稲穂が永遠に実る日本の国は、本来ならば日の神であるわたしの子が治める国なのです。
しかし、このままでは、日本の国はオオクニヌシのものになってしまいます・・・
今すぐ、わたしの長男オシホミミを、日本の国に降臨させましょう」
え・・・そんなにうまくいくものだろうか・・・
現にオオクニヌシが支配している日本の国に、何の準備もせずにいきなりオシホミミさまが降りたところで、何もできないんじゃないか・・・
わたくしはそう思いました。
しかし、アマテラス大御神はすぐにオシホミミさまを呼び出すと、地上の日本へ統治者として降りていくよう、お命じになりました。
結果は・・・案の定でございました。
オシホミミさまは天の浮橋まで降りてりきましたが、そこで日本の国の様子をご覧になり、統治者として降りていくことなど到底無理だとお感じになって、引き返してきたのでございます。
そもそも、オオクニヌシを中心に君臣が大変よくまとまっている日本の国に、何の準備もなく統治者として入っていけ! というのが無茶なご命令でした。
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☆オシホミミ
このうけいではスサノオが勝ったことになっています。しかし、オシホミミの古事記での本名は「正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命」(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)といいます。
これは「正に勝った、自分が勝った、勝った勢いに乗じる天の強い稲穂の神」という意味で、アマテラスの子が勝った、というのは話の流れに矛盾します。
日本書紀ではスサノオが「男神が産まれたら自分の勝ちだ」と宣言していることと合わせて、伝承の混乱があるのでしょう。
オシホミミは福岡県田川郡添田町の英彦山神宮や、奈良県生駒市の天忍穂耳神社などで祀られています。
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