古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

イザナミを葬り、カグツチを斬る

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イザナミは死んだ・・・

 

私は泣いた・・・どれぐらい泣いただろうか・・・

 

その涙からも神が生まれてきた。ナキサワメの神だ。しかし、その時はそこまで気が回らなかった・・目の前の、イザナミの死の悲しみで、心がいっぱいだったのだ。

 

わたしはイザナミの遺体を抱え、出雲の国と伯耆の国の境にある比婆山に来ていた。そこにイザナミを手厚く葬った。

 

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しかし・・・それでもなお、私の悲しみは消えなかった・・・

私はその悲しみが、いつしか憎しみ、怒りの感情に変わっているのに気づいた・・・その感情の先にはカグツチがあった・・・

 

そう・・愛する妻を奪った我が子、カグツチ・・

 

生まれたばかりのカグツチは、かわいらしい無邪気な目で私を見上げていた・・・しかしその姿を見て、私が感じたのは怒りの増幅だけだった・・・

 

わたしは、十束の剣を手に取った。

「ああ、愛しいわが妻・・・なぜ子の一人のために!」

 

わたしは剣を振り上げた・・・そしてカグツチを斬った!

 

飛び散ったカグツチの血からも、多くの神々が産まれてきた。その神の一人ににタケミカヅチがおり、後の世に大活躍したそうである。

 

・・・しかし、その時は、新たに生まれてきた神まで思いは及ばなかった。我が子の一人を斬ると、急に言いようのない虚しさだけが襲ってきたのだった・・・。

 

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イザナギの自伝 目次

 

 

☆ナキサワメ

 

 古事記には「イザナギが腹ばいになって泣かれた時の涙から生まれた神は、香山(かぐやま)の畝尾の木本に鎮座されている。名を泣沢女神という」と記述されています。

奈良県橿原市、天香具山(あめのかぐやま)ふもとの畝尾都多本神社(うねおつたもとじんじゃ)にナキサワメが祀られています。

 

畝尾都多本神社 橿原市 

 

比婆山

 

イザナギは出雲と伯耆の境にある比婆山イザナミを葬りました。

イザナミの御陵については諸説ありますが「出雲と伯耆の境」に地理的に一番近いのは島根県安来市比婆山だと思われます。比婆山にはイザナミを祀る比婆山久米神社があり、山頂にはイザナミの御陵とされている奥宮があります。

 

 

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☆オハバリとタケミカヅチ

 

イザナギカグツチを斬った剣がオハバリ、斬った時の血から生まれたときの神がタケミカヅチです。

時が経ち、オオクニヌシに国譲りの交渉役として天の安川(高天原を流れている川)の上流に鎮座されていたオハバリが指名されましたが、 オハバリはその役を子のタケミカヅチに譲りました。

 

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