イザナミの自伝 4
わたしたちは、天の浮橋に建って地上世界を見下ろしていた
そこは、ただ茶色のどろどろとした海が一面に広がっているだけだった。ここに国を造れ・・と言う命を受けたわけだが・・・
国を造れと言われてもどうすればよいのだろう・・・さっぱりわからない
イザナギの方を見た・・彼も難しい顔で地上世界を見下ろしている。彼もどうすればよいのか見当もつかなかったのだろう。
このまま、どれほどの時が経ったのだろうか・・・
このままではらちが明かない・・・そう考えたわたしは、
「イザナギ・・」と声をかけた
「ん・・・」イザナギはわたしのほうを振り返る。
「ほら!」わたしは、アメノミナカヌシの大神から賜った天沼矛を手渡した・・特に何か当てがあったわけではない。なんとなく、それを手渡せば何とかなるんじゃないか‥と感じたのである。
イザナギは難しい顔のまま、無言で手を伸ばし天沼矛に手をかけた・・・その瞬間だった!
わたしとイザナギがふたりで矛を持ったその瞬間、頭の中にひらめいたものがあったのである・・わたしはとっさにイザナギの方を見た。すると、イザナギも同じことをひらめいたのだろう、さっきの難しい顔が、希望の表情に変わっていた!
わたしとイザナギは、ふたりで手に矛を持ったまま、その矛の先を地上世界におろしていった。そしてどろどろとした海の中にその矛を突き刺すと、矛で海の中をこおろこおろとかき回したのである。
そして矛を持ち上げた・・・矛の先からはしずくが垂れていた。
しずくは一滴、また一滴・・・と矛の先から海に落ちていき、しずくは海の中に積もって、だんだん大きくなっていき・・
そして島ができたのだ。一面の海の中に、この世に初めてできた島だった。
自ら凝り固まった島であるので、わたしたちはこの島をオノゴロ島(自凝島)と名付けた
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☆おのごろ島
「自ら凝り固まった島」の意味です。イザナギとイザナミが下した矛のしずくが固まった島であり、両神が「産んだ」島ではないと古事記には記されています
その所在については淡路島周辺を中心に全国に比定地が上がっています
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