古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ホムチワケさまがいない!

野見宿祢の自伝 20

 

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さて、ホムチワケさまが言葉を話せるようになり、そのことを大和に急使を立てて知らせた翌日。

 

その日、ホムチワケさまは少数の従者だけを連れて散歩に出かけていた。わたしは斐伊川の仮宮にとどまり、オオクニヌシの神殿の建て替えや今後の祭祀について、息子で出雲国造のキイサツミと打ち合わせをしていた。

 

その日の夕方、出かけていたホムチワケさまが帰ってきたのだが・・・一人の美しい、若い娘も一緒に連れて帰ってきたのだ!

 

ホムチワケさま・・・そちらの娘さんは・・・?」

あっけにとられたわたしが尋ねると・・・

 

「ヒナガヒメと言ってな、小川で水くみをしていたところをわたしが見初めて、后にすることを約束したんだ。ノミ、よろしく頼むぞ・・・」

 

「はあ・・・」

 

わたしもキイサツミもあきれて何も言えなかった。言葉をしゃべれるようになった途端に、この行動力・・・さすが、日向の天孫二ニギの血を引くだけのことはある・・・

 

その日、ホムチワケさまは仮宮の一室にヒナガヒメを連れ込み、一夜を共にされたのだった。

そして、その翌日・・・

 

ホムチワケさまがいない!!」

 

仮宮は大騒ぎになった。ホムチワケさまがヒナガヒメともども、仮宮からいなくなっていたのだ!

 

我々は大慌てで、各地に捜索隊を出しホムチワケさまを探した。しかし見つからない!

 

そのまま数日の時が過ぎた。

わたしは非常に焦っていた。これでは陛下に申し訳がたたない。かくなる上は、自害して陛下にお詫びせねば・・・・

 

そう覚悟を決めたとき、大和の陛下から勅使が届いたのだ。

ホムチワケは大和の宮殿に帰っている。ノミもすぐ帰れ」

と・・・

 

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