野見宿祢の自伝 14
サホビコの反乱から十数年の時が経った。
陛下はサホビメさまの後、后とされたヒバスヒメさまと一緒に過ごされていた。陛下はサホビメさまと同じように、いやそれ以上にヒバスヒメさまを寵愛されていた。
そして、サホビメさまの忘れ形見となった皇子、ホムチワケさま。
陛下も、また義母となったヒバスヒメさまも、ホムチワケさまには深い愛情を注いで養育されていた。
わざわざホムチワケさまのために、尾張の相津(あいつ)に二俣に分かれた杉が生えているときけば、わざわざ伐採させて取り寄せた。そして二俣舟を作り、それを大和の市師池(いちしのいけ)や軽池(かるのいけ)に浮かべては、ホムチワケさまをその船に乗せて遊ばせたりしていた。
しかし、ホムチワケさまにはひとつ、大きな問題があった・・・言葉がしゃべれないのだ。
ホムチワケさまはもう立派な青年になっていたが、生まれてこの方、一言も言葉を発したことがなかったのだ。
そんな折、ホムチワケさまと陛下は宮殿の庭に出ていた。わたしはお二人に付き従っていた。
その時、宮殿の上空を一羽の白鳥が飛んでいった。翼を広げて、悠々と・・・
その白鳥を見たホムチワケさまは、空の白鳥を指さし仰せになったのだ!
「ああ・・・ああ・・・」と!!
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☆白鳥
白鳥は夏の間シベリアで子育てをして、冬になるとヨーロッパや東アジアで越冬をする渡り鳥です。日本にも晩秋から初冬にかけて飛来し、春先にシベリアに向かって旅立っていきます。
現在は「白鳥(ハクチョウ)」と言っていますが、古代には「鵠」と書いて「くぐい」と読んでいました。古事記や日本書記にも原文では「鵠」と表記されています。
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