野見宿祢の自伝 18
わたしはホムチワケさまの伴として出雲に向かうことになった。
しかし、陛下は申されたのだ。
「果たして本当にオオクニヌシの大神を拝むと、ホムチワケが話せるようになるのか・・・今一度、占いで確かめよう」
そして陛下の命により朝廷専属の占い師が再び呼び出され、今度は誓約(うけい)による占いが行われたのだ。
陛下とホムチワケさま、それにわたしは占い師に連れられ、鷺巣池(さぎのすいけ)に来ていた。占い師は
「この大神を拝むことによりて確かな霊験があるのならば、この鷺巣池に住む鷺(サギ)、すべて落ちよ!」
占い師はそういうと、木にとまっていた鷺がバタバタ落ちて、死んでしまったのだ!
さらに
「真の霊験あらば、今落ちた鷺、生き返れ!!」
というと、今落ちて死んだはずの鷺は、次々と生き返って飛び立っていってしまったのだ!
わたしは不思議な光景でそれを見ていた。ここまで行くと、この占いの結果は完ぺきなように思えたのだ。
しかし、陛下は
「今一度、占ってみよ!」
と仰せになられ、占い師は今度は同じように樫(かし)の木の葉をすべて落として枯らしたかと思うと、元通り生き返らせたのだ。
あまりの陛下のしつこさに、正直、わたしは少々辟易していた。ここまでせずとも、もう結果は見えているだろうに・・・いや、この慎重さも統治者にとっては必要なのかもしれないが、それにしても・・・
さしもの陛下も、この結果を見て
「よし、これなら大丈夫だな・・・ノミ、ホムチワケをよろしく頼んだぞ」
と仰せになられたのであった。
その時、占い師が言った。
「大和から出立するにあたり、那良戸や大坂戸には足が立たないもの、目が見えないものが大勢居ります。木戸のほうから大和を出ていくのがよろしいかと思われます。
こうして我々ホムチワケ様の一行は、木戸から木の国を経て出雲に向かったのだった。
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☆鷺栖神社
垂仁天皇が誓約(うけい)で占いを行った鷺巣池は、現在の奈良県橿原市の鷺栖神社(さぎすじんじゃ)の地にあったといわれています。
☆那良戸・大坂戸・木戸
「那良戸」(ならと)は奈良盆地から京都方面に向かう道、「大坂戸」(おおさかと)は奈良盆地から大阪府方面に向かう道、「木戸」(きど)は五條市から和歌山のほうへ向かう道を指します。
北や西に向かう道は身体障碍者がたむろして縁起が悪いので、木戸から木の国(紀伊)へと遠回りして出雲へ向かった、というわけです。
もちろん、現代の人権感覚でどうこう言っても仕方がありませんが・・・
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