古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

出雲へ旅立つ

野見宿祢の自伝 18

 

f:id:karibatakurou:20220211172847j:plain

 

わたしはホムチワケさまの伴として出雲に向かうことになった。

 

しかし、陛下は申されたのだ。

「果たして本当にオオクニヌシの大神を拝むと、ホムチワケが話せるようになるのか・・・今一度、占いで確かめよう」

 

そして陛下の命により朝廷専属の占い師が再び呼び出され、今度は誓約(うけい)による占いが行われたのだ。

陛下とホムチワケさま、それにわたしは占い師に連れられ、鷺巣池(さぎのすいけ)に来ていた。占い師は

 

「この大神を拝むことによりて確かな霊験があるのならば、この鷺巣池に住む鷺(サギ)、すべて落ちよ!」

 

占い師はそういうと、木にとまっていた鷺がバタバタ落ちて、死んでしまったのだ!

さらに

「真の霊験あらば、今落ちた鷺、生き返れ!!」

というと、今落ちて死んだはずの鷺は、次々と生き返って飛び立っていってしまったのだ!

 

わたしは不思議な光景でそれを見ていた。ここまで行くと、この占いの結果は完ぺきなように思えたのだ。

しかし、陛下は

 

「今一度、占ってみよ!」

と仰せになられ、占い師は今度は同じように樫(かし)の木の葉をすべて落として枯らしたかと思うと、元通り生き返らせたのだ。

 

あまりの陛下のしつこさに、正直、わたしは少々辟易していた。ここまでせずとも、もう結果は見えているだろうに・・・いや、この慎重さも統治者にとっては必要なのかもしれないが、それにしても・・・

 

さしもの陛下も、この結果を見て

「よし、これなら大丈夫だな・・・ノミ、ホムチワケをよろしく頼んだぞ」

と仰せになられたのであった。

 

その時、占い師が言った。

「大和から出立するにあたり、那良戸や大坂戸には足が立たないもの、目が見えないものが大勢居ります。木戸のほうから大和を出ていくのがよろしいかと思われます。

 

こうして我々ホムチワケ様の一行は、木戸から木の国を経て出雲に向かったのだった。

 

 

前<<<  再び出雲へ - 古事記の話 (hatenablog.com)

次>>>  しゃべった!! - 古事記の話 (hatenablog.com)

 

野見宿祢の自伝 目次

 

 

☆鷺栖神社

 

垂仁天皇が誓約(うけい)で占いを行った鷺巣池は、現在の奈良県橿原市の鷺栖神社(さぎすじんじゃ)の地にあったといわれています。

 

玄松子の記憶 鷺栖神社

 

☆那良戸・大坂戸・木戸

 

「那良戸」(ならと)は奈良盆地から京都方面に向かう道、「大坂戸」(おおさかと)は奈良盆地から大阪府方面に向かう道、「木戸」(きど)は五條市から和歌山のほうへ向かう道を指します。

 

北や西に向かう道は身体障碍者がたむろして縁起が悪いので、木戸から木の国(紀伊)へと遠回りして出雲へ向かった、というわけです。

もちろん、現代の人権感覚でどうこう言っても仕方がありませんが・・・

 

 

古事記・古代史関連のサイト≫
 
小説古事記
古事記ゆかりの地を訪ねて

古代史探訪

 

≪その他の姉妹サイト≫

 

カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話

 

ツイッターもしています≫

https://twitter.com/sikisima10