山幸彦の自伝 19
兄ホデリがわたしの宮に攻撃を仕掛けてきた。
「ホオリさま!兄君の軍が攻めてきています!!」
宮の周りを警護していた従者から、その第一報はもたらされた。従者たちの間で動揺が走る。
ホデリは没落したといっても、高千穂宮の大軍を手中にしている。一方、わたしのもとにはわずかな従者しかいない。
普通に考えたら、わたしのほうに勝ち目はない。
その時だった。従者たちが口々にわたしに向かって叫びだした。
「ホオリさま、すぐに逃げてください!」
「我々が撃って出ます!ホオリさまはそのすきに、はやく!」
「さあ、ホオリさま、こちらへ!」
さすが、わたしの腹心の部下たちだ。自分たちは死を覚悟してもわたしを落ち延びさせようとしているのだ。わたしは感動したが、事態はそれどころではなかった。
「ホオリさま、何をしているのですか!時間がありませんぞ!!」
従者が悲痛な叫びをあげる。
その声で我に返ったわたしは、従者たちに向かって言った
「全員、屋根の上に上がれ!!」
「ええっっ!? そんなことしたら、格好の矢の的になってしまいます!」
「いいから上がるんだ!!戸板を外して盾にして、しばらく矢を防いでくれ」
「しかしそんなことをしても、結局はやられてしまいますぞ!」
「大丈夫だ、わたしの言うとおりにするんだ!早く!」
従者たちは半信半疑ながらも、それほどまでにいうのならと、わたしに従うことにした。どうせこのままぐずぐずしていても、全員やられてしまうだろう。
わたしと従者は全員、屋根の上に上がった。わたしを中心に従者たちが取り囲み、従者たちは戸板の盾でわたしを護っていた。
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