古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

津波!!

山幸彦の自伝 20

 

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兄ホデリがわたしの宮に攻撃を仕掛けてきた。わたしと従者は屋根の上に上がり、わたしを中心に従者が周りを取り囲み、戸板で作った急ごしらえの盾で護る。

 

そうこうしているうちにも、ホデリの軍勢は私の宮の目の前まで進軍していた。先頭に立っているのはホデリだ。兄ホデリが自ら軍を率いて攻撃してきたのだ。

 

「おい、見ろよ!あいつら、馬鹿じゃないのか?みんな屋根の上に上がって、あれじゃ、格好の的じゃないか!!」

軍勢の兵士たちはそう思ったに違いない。

 

びゅわ~~ん!!

 

鏑矢が飛んだ。それを合図に、一斉に矢が飛んできた。

宮の四方から雨あられとふってくる矢・・・

 

「ホオリさま!これではとても、防ぎきれません」

従者が悲壮な声で叫ぶ。

 

その時、わたしは立ち上がって、懐から一つの玉を出し、頭上高く掲げたのだ!玉は一瞬、ぴかっとまばゆい光を放った!

 

その光に目がくらんだのだろう、一瞬、矢の攻撃が止まった。しかしホデリの軍勢はすぐに体勢を立て直し、再び激しい矢の攻撃を仕掛ける。

 

・・・と、その時だった!

 

ず・・・ず・・・ず・・・

 

海のほうから、不気味な音と振動が伝わってきた。それはだんだん大きくなっていく。

「なんだ、あの音は・・・」

従者たちは不安な声でつぶやく。

いや、その不安はホオリの軍勢の兵士たちも同様だった。兵士たちの間に動揺が走ったのだろう。矢の攻撃が少し弱まった。

 

その時!!

 

津波だ!大きいぞ!!」

従者の一人が叫ぶ。そう、海のほうから大きく高い波が押し寄せてきたのだ。

 

屋敷の下では、戸惑う兵士たちの声が飛び交う。

「なんだ!あれは!」

「逃げろ~~!」

 

兵士たちも状況を理解し、逃げまどっているのが見えた。しかし、逃げる間もなく次々と兵士たちは波に飲み込まれていく。

 

・・・そう、わたしが頭上に掲げた球は、海神ワタツミから授かった「塩満珠」(しおみつたま)だったのだ!

 

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山幸彦の自伝

 

 

潮満珠・潮乾珠

 

二ニギが海神から授かった潮満珠・潮乾珠。

宮崎県日南市の鵜戸神宮に神宝として伝わっています。潮満珠は丸い水晶型、塩乾珠は大きさの違う形の円柱を4段重ねた形で、大きさは5~7cmということです。

 


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