山幸彦の自伝 17
釣りに出掛けた兄ホデリが帰ってきた。しかし、その顔は明らかに不機嫌だ。魚が釣れなかったのだろうか。
「兄上、どうしたのですか」
「どうしたもこうしたも、一匹の魚も釣れやしない。おかしい、こんなこと、初めてだ・・・お前、針を返す時、背を向けてなんかぶつぶつ言ってたな・・・まさか何か、呪いをかけたんじゃないだろうな」
「そんなわけないですよ、たまたまですよ」
口ではそう言いながら、心の中で
『これが海神から教えてもらった言葉の意味か・・・すごい効き目だ、恐ろしいな・・・』
と、思ったものである。
ホデリは次の日も、その次の日も海に釣りに行った。しかし、小魚一匹つれなかった。
そしてホデリの怒りは私に向けられた。ホデリは日に日に荒んでいった。わたしとホデリの兄弟仲は修復できないほど悪くなっていった。
わたしは高千穂宮を出て、海神の宮殿から帰ってきたときに上陸した海岸に新たに宮を建て、そこに拠点を移すことにしたのだった。
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☆青島神社
宮崎県日南市の青島神社は、ホオリが海神の宮殿から戻って宮を営んだ地と言われています。
現在は観光地として人気の青島ですが、江戸時代までは「神の島」として一般人の上陸は固く禁止されていました。
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