古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

釣れない魚

山幸彦の自伝 17

 

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釣りに出掛けた兄ホデリが帰ってきた。しかし、その顔は明らかに不機嫌だ。魚が釣れなかったのだろうか。

 

「兄上、どうしたのですか」

「どうしたもこうしたも、一匹の魚も釣れやしない。おかしい、こんなこと、初めてだ・・・お前、針を返す時、背を向けてなんかぶつぶつ言ってたな・・・まさか何か、呪いをかけたんじゃないだろうな」

 

「そんなわけないですよ、たまたまですよ」

口ではそう言いながら、心の中で

 

『これが海神から教えてもらった言葉の意味か・・・すごい効き目だ、恐ろしいな・・・』

と、思ったものである。

 

ホデリは次の日も、その次の日も海に釣りに行った。しかし、小魚一匹つれなかった。

 

そしてホデリの怒りは私に向けられた。ホデリは日に日に荒んでいった。わたしとホデリの兄弟仲は修復できないほど悪くなっていった。

 

わたしは高千穂宮を出て、海神の宮殿から帰ってきたときに上陸した海岸に新たに宮を建て、そこに拠点を移すことにしたのだった。

  

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山幸彦の自伝

 

 

青島神社

 

宮崎県日南市の青島神社は、ホオリが海神の宮殿から戻って宮を営んだ地と言われています。

現在は観光地として人気の青島ですが、江戸時代までは「神の島」として一般人の上陸は固く禁止されていました。

 

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