信濃の国までタケミナカタを追いかけていったタケミカヅチ。タケミナカタを降参させて稲佐の浜に戻ってきた。
タケミカヅチはまだ稲佐の浜に立っていたわたしを見つけると、近寄ってきて言った。
「オオクニヌシよ、タケミナカタは降伏した。コトシロヌシもタケミナカタも、日本の国はアマテラス大御神に献上すると申された。貴殿はどうされるおつもりか」
もう、わたしの腹は決まっていた。タケミカヅチに対して言った。
「ふたりの子が申し上げたことに、わたしが逆らうことはありません。この日本の国はご命令の通り、アマテラス大御神に献上し、わたしは引退いたします。
ただ、ひとつだけ、お願いがございます。わたしの引退後の住まいを建てていただきたいのです。大地に太い柱を立てて、天に届くような大きく立派な宮殿を作っていただきたいのです。そう、天つ神の宮殿のように。
そうしてくだされば、わたしはその宮殿の奥に隠居し、表に出てくることはありません。また数多くいるわたしの子たちはコトシロヌシを筆頭にお仕えいたします。日本には天つ神に背く神はいないでしょう」
これを聞いたタケミカヅチは
「承知した。お心遣い、感謝する。貴殿の願いは間違いなくかなえられるであろう」
そういうと、天に帰っていった。
こうして日本の国は、わたしの支配を離れ、アマテラス大御神のものとなった。
その後はアマテラスの孫であるニニギが高天原から日向に降りて来て、わたしから日本の国の統治を引き継いだ。
今に続く皇室はニニギの子孫である。降臨して以来、現在の第126代今上天皇に至るまで、その血統は受け継がれてきている。
タケミカヅチはわたしとの約束を違えることは無かった。わたしのために、出雲の国に、わたしが申し上げた通りの宮殿を建ててくれた。
そして、わたしもタケミカヅチに約束した通り、その宮殿の奥に入り、それ以来、一歩たりとも外に出ることは無かった・・・そう、今現在に至るまで。
その宮殿は、今では出雲大社といわれている。
それから激動の時が過ぎた。そして令和の時代となった今も、この宮殿の奥で、わたしは日本の国の繁栄と民の幸せを祈り続けている。
― オオクニヌシの自伝 完 ―
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☆出雲大社
この時、国譲りの交換条件として建てられたのが出雲大社です。今もオオクニヌシは本殿に鎮座され人々の信仰を集めています。
☆オオクニヌシの自伝 完結です
この拙い小説をお読みくださいました皆様、ありがとうございました。
しばらくお休みを頂いた後、今度はオオクニヌシの先祖であるスサノオの自伝を書いていこうかと考えております。
再開の際はまたよろしくお願いいたします。
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