わたしは二人の神を伴って、稲佐の浜に出向いていった。
稲佐の浜の波打ち際には、高天原から降りてきた二人の神が立っていた。一人は宮殿に来た、副官のアメノトリフネだ。ということは、もう一人が正使のタケミカヅチだろう・・・
いや・・・タケミカヅチは、立っているのではない・・・
あぐらをかいて座っている・・・
逆さに突き立てた、剣の上に!
鋭く尖った剣の上に、あぐらをかいて座っているのだ!
そのタケミカヅチは、わたしの姿を見ると、何の挨拶もなくいきなり用件を切り出した。
「高天原のアマテラス大御神の遣いで参った!
日本の国は、本来は太陽神であるアマテラス大御神の子孫が治めるべき国である。いま、貴殿が治めているこの国は、直ちにアマテラス大御神にお返しせよ!
返答次第によっては、直ちに総攻撃に移る準備はできている。
貴殿はどう考えるか!?」
タケミカヅチは雷の神だという。その恐ろしい声はまさに雷のごとく、出雲の山々まで響き渡った。
もっともわたしも異母兄をはじめ、日本各地の反抗的な部族と戦い、日本中にその勢力を拡大してきたオオクニヌシ(大国主)である。
この程度のこけおどしに、別に何の恐怖も感じなかった。
わたしは静かに言った
「ここに二人の息子を伴ってきております。この息子たちはとても聡明で、わたしが国政を行う上で何かと頼りにしている神です。息子たちがわたしに変わってこたえるでしょう」
そう、わたしが伴ってきた二人の神は、我が息子、コトシロヌシとタケミナカタだったのである。
前<<< アメノトリフネが来た - 古事記の話
次>>> コトシロヌシの結論 - 古事記の話
☆稲佐の浜
出雲大社の近くにあり、タケミカヅチがオオクニヌシを恫喝・・・いや、国譲りの交渉が行われた地とされています。
≪リンク≫
小説古事記
古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話