古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

讒言で殺されるオオクサカ

 

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皇太子のキナシは伊予の国に流され、自害した。

キナシに変わって皇位を継いだのは、キナシを捕らえて処罰した、同母弟のアナホであった。第20代の安康天皇である。

 

さて、アナホは同母弟のオオハツセのために、彼の嫁として、オオクサカの娘ワカクサカを召し出そうと考えた。そこで家臣のネノオミを使者としてオオクサカのもとに遣わした。

 

ネノオミは天皇からの口上をオオクサカに伝える。

「貴殿の妹君ワカクサカどのを、陛下の弟君のオオハツセさまの嫁として迎え入れたいとの仰せです。いかがでしょうか」

 

これを聞いたオオクサカは、喜んで答えた

「このようなこともあろうかと、妹は外に嫁には出さずに家に置いております。大変恐れ多いことです。御命令の通り、妹はお仕え奉ります」

と答えた。

そしてネノオミには玉で飾り立てた冠を天皇への献上品として持たせて

「どうか陛下にはよろしくお伝えください」

と、丁寧に送り出したのだった。

 

ところが・・・

 

ネノオミは、「天皇陛下への献上品に」と持たされた、きらびやかな玉飾りの冠に目がくらんでしまった。

あろうことか、ネノオミは冠を自分の屋敷へ持ち帰ってしまったのである。

 

そしネノオミは、天皇

「オオクサカさまは『大事な娘をそんな血族の末席に嫁にやれるか!』と申されました。太刀に手をかけてお怒りでした。」

とうそをいったのである。

 

これを聞いた天皇は激怒した。

確かにオオクサカは仁徳天皇の子であり血統で言えば本家筋に近いが、それでも今の天皇は自分なのだ。

 

直ちに討伐軍を送り、オオクサカを殺してしまった。

 

それだけでない、オオクサカの妻ナガタを自分の皇后にしてしまったのだ。

 

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☆オオクサカ、気の毒・・

 

古事記にはこの後、讒言したネノオミがどうなったかは記されていません。

日本書紀では後に悪事が露見し、雄略天皇となったオオハツセにより追討されています。

 

 (冒頭の写真は安康天皇陵 / 奈良まちあるき風景紀行より)

 

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