古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

マヨワとツブラ、自決する

 

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「オオハツセ様、先にお約束いたしました私の娘カラヒメは、オオハツセ様のもとにお仕えいたします。また娘には、私が持つ五か所の田地もすべて副えて献上いたします」

ツブラはオオハツセに向かって静かに言った。

 

オオハツセは答える

「そうか、わかった。では、マヨワも引き渡せ」

 

しかしツブラは

「それはできません」

ときっぱり言った。続けて言う

「いにしえの昔より、臣下のものが皇宮に隠れたということはあっても、御子が臣下の家に隠れたというようなことは聞きません。皇軍の勢いは絶大で、臣下のものが抵抗したところで敵うことは無いからでしょう。賎しき身の私が力を尽くし戦ったところでとても皇軍に勝てることは思えません。

しかしわたくしを頼ってきた御子です。死んでも見捨てることはできません」

 

そういうと、屋敷の中に帰っていった。オオハツセは厳しい顔で黙って何も言わなかった。

 

一刻後に屋敷からカラヒメが出てきて、オオハツセのもとに入っていった。

 

「マヨワにツブラ・・・なかなか骨のある奴らだ・・・兄のシロヒコやクロヒコとは大違いだ。殺してしまうには惜しい奴だが・・・やむを得ん。行け!」

オオハツセは総攻撃の命令を出した。

 

ツブラの軍はよく戦った。しかし、皇軍相手に勝てるわけがなかった。

矢もつき、ツブラも重傷を負った。皇軍の兵士はすぐにでも斬り込んでくるだろう。

 

ツブラはマヨワに言った。

「マヨワ様・・・ご覧の通りであります。もう矢もなく、私も深手を負いました。これ以上は戦えません。いかがいたしましょう」

 

マヨワはツブラの手を取り、答える。

「ツブラ・・・すまない・・ぼくのために・・」

その手は震えていた・・気丈にふるまってはいるが、まだ7歳の男の子なのだ。

 

ツブラは思わずマヨワを抱きしめた。

「いいえ、マヨワ様・・もったいのうございます。私を頼っていただき、こんなうれしいことはありません」

「かくなる上は、もう何もできないでしょう。ツブラ・・そなたの手で、私を殺してください」

 

ツブラは涙を流しながら、剣に手をかける。

 

「・・・マヨワ様!私もすぐに御元へまいります!」

そういうと、ツブラは一刀のもとにマヨワの体を斬った。

 

そしてツブラは自らの頸に剣を刺して果てたという。

 

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