古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

鰹木を並べた家

 

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自分の兄を殺し、履中天皇の御子オシハを暗殺し、その幼い御子オケとヲケも軍を送って追放したオオハツセ。皇位継承権を持つものを次々と消していった彼は、大和の朝倉宮で天皇に即位した。第21代雄略天皇である。

 

ある日、天皇は河内の日下(くさか)に行幸に出ていた。その地に住むワカクサカを皇后として迎え入れることが決まり、天皇自ら迎えに出向いたのである。

 

大和から生駒山の峠を越えた。ここからは河内の平野の家々がよく見える。

その時、天皇の眼に入ったもの・・・ひときわ大きな家だった。そして屋根に鰹木を並べている。

 

天皇は側近に尋ねた。

「あの鰹木を並べた家は、誰の家だ?」

 

問われた側近は、いやな予感がしながらも答える。

「はい、あれは志幾(しき)の大県主(おおあがたぬし、地方の行政長官)の屋敷でございます」

 

側近の予感は的中した。

「大県主か・・・その程度の分際で、皇宮に似せて鰹木の屋根を作るとは、とんでもない奴だ!すぐに燃やしてしまえ!」

天皇は命令する。

 

既に絶大な専制君主であった天皇を諫める者などなく、兵士は命令通り火をつけるため屋敷に向かっていった。

 

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☆鰹木

 

神社の屋根の上に地面と水平に並べられた柱が鰹木(かつおぎ)です。

ちなみに屋根の両端で交差している柱を千木(ちぎ)と言います。

 

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(屋根上の鰹木と千木)

 

もともと、鰹木は屋根を支えるための重りでした。また千木は屋根の両端の三角形に立てた柱の、頂点で交差してはみ出した部分をそのまま残したものです。

時代とともに実用性が薄れて装飾的なものになり、神聖なものとして認識されるようになりました。今では神社建築のみに残されています。

 

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