オオクサカを殺し、その妻ナガタを自分の皇后にしてしまった天皇。
オオクサカとナガタの間には、幼い男の子がいた。名をマヨワと言った。マヨワは皇后となったナガタが引き取って育てていた。
それから数年、マヨワは7歳になっていた。遊びたい盛りのやんちゃな男の子である。
その日もマヨワは侍従たちの目を盗んで宮中の神殿に入って遊んでいた。本来子供は入ってはいけない、神聖な場所である。そして神床の下で、ついうとうとと眠り込んでしまった。
そしてマヨワが目を覚ました時、神床の上で声がする・・その声、父と母・・すなわち天皇と皇后のようだ。
神殿の中に入ったことが分かれば怒られる・・・マヨワは物音を立てないよう、小さくなってじっとしていた。
天皇と皇后の会話は続く
「后よ・・そなたは何か、心配に思うことがあるか?」
「何をおっしゃいます、陛下・・こんなに陛下に愛されて、何の心配がありましょうか」
「そうか・・・私は一つ、つねづね心配していることがあるのだ・・そなたの子、マヨワのことだ・・
マヨワが成長した時、私が父親を殺したと知れば、マヨワはどう思うだろうか・・私に反逆の心を持つかもしれない・・」
「何をおっしゃいますか、心配しすぎですわ・・黙っていれば何も分かりませんわ・・」
「そうだな・・」
この会話、マヨワはみんな聞いてしまっていた!
マヨワの幼い心はいかばかりであったろう・・・
父と思っていた天皇は実の父ではなかった。いや、それどころか、実の父を殺したのが天皇だったのだ・・
その夜、天皇は寝ているところを首を刺されて殺された。マヨワによって・・
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☆目弱王の変(まよわのみこのへん)
マヨワの古事記での表記は「目弱王」(まよわのみこ)です。弱々しい名前ですが、その名とは裏腹に、芯の座った度胸ある男の子です。
この物語、日本で最初の仇討として知られています。
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