古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

カル、捕わる

 

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カルはオオマエコマエの屋敷に逃げ込み、武具を用意し兵を集めた。

 

朝廷に残ったアナホは、先制すべく軍を招集し、カルが立てこもるオオマエコマエの屋敷に進軍して行った。

 

空が崩れ、大雨が降り出す。まるで凍てつくように冷たい雨だった。

アナホが率いる軍はオオマエコマエの屋敷を取り囲んだ。

 

その時、降りしきる大雨の中、屋敷の主人のオオマエコマエが両手をあげながら出てきた。そしてアナホのもとに来て言うには

 

「我が大君(おおきみ)である天の御子よ!兄君に対して刃を向けてはなりません。そのようなことがあると後世の人の笑いものになってしまいます。

わたくしがカルさまを捕らえて差し出しましょう」

 

そこでアナホは軍を退却させた。

 

一刻後、オオマエコマエの説得に応じたカルは、アナホのもとにオオマエコマエに連れられてきた。

 

カルはオオマエコマエの屋敷を出るとき

 

「天を飛ぶソトオリの乙女よ・・お前が泣いているのが聞こえるよ・・しっかり寝てから行くんだよ・・」

と、あてもない空に向かってつぶやいたという。

 

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