古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

歌の意味は・・・

オオビコの自伝 10

 

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「陛下!」

 

わたしは大和の都に戻ると、とる物もとりあえず陛下の御前に駆け付けた。

 

「オオビコ、どうしたのだ?!そんなに大慌て戻ってきて、何があったのだ?」

陛下は当惑した顔で仰せになった。

わたしは陛下のお顔を拝して、少し安心した。とりあえず、陛下はご無事なようだ。

 

「陛下!御無事でございましたか!!良かった・・・」

「いや、無事も何も、余の身には変わりはないが・・・オオビコ、いったいどうしたというのだ?」

「あ、はい、陛下!実は・・・」

 

わたしは弊羅坂で出会った少女のことを陛下に話した。

 

わたしの話を聞いた陛下は、しばらく考え込んでいたが、おもむろに

「これはもしや、そなたの異母弟の、タケハニヤスのことではなかろうか・・・」

と、おもむろに言った。

 

わたしの異母弟のタケハニヤス・・・山代の国に今は住んでいる。しかし皇室への忠誠心はあまり強くはなく、たびたび不穏な噂を耳にしている。

 

「実は先日、タケハニヤスの妻のアタヒメが香久山(かぐやま)の土を衣服に包んで持ち帰ったとの報が入ったのだ・・・

香山の土は、天神地祇への供え物を入れる器を焼くのに使う・・それを自分のものにするのは、神が支配する日本を自分のものにするという呪いに違いない。

 

・・・叔父上!」

 

「は、はい」

わたしは突如、叔父上と呼ばれてびくっとした。確かにわたしは陛下の叔父であるが、普段は名前で呼ばれていたのだ。

 

「ご苦労だが、このまま兵を率いて、タケハニヤスを討ってくれ。副官としてヒコクニブクを添えて遣わそう。頼む」

「はい、かしこまりました」

 

こうしてわたしは兵を率いて再び山代の国へ進軍していった。タケハニヤスを討伐するために。

 

 

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オオビコの自伝 目次

 

 

☆タケハニヤス

 

古事記での表記は「建波邇安王」(たけはにやすのみこ)、日本書紀での表記は「武埴安彦」(たけはにやすびこ)。

第8代孝元天皇の皇子で、オオビコにとっては異母兄弟、崇神天皇にとっては叔父となります。

 

妻のアタヒメ(吾田媛)は古事記には見えず、日本書紀にのみ載っています。日本書紀では、アタヒメは別動隊を率いて朝廷に攻め込みますがキビツヒコに征伐されたことになっています。

 

☆香久山

 

大和三山のひとつ、香久山。古くから神事に用いられる陶土の採集が行われてきました。万葉集に歌われた山としても知られています。

山頂には国常立神社、山麓には「天香山坐四處神社」と呼ばれる天香山神社・天岩戸神社・畝尾都多本神社・畝尾坐健土神社が鎮座されており、古代より信仰の山であったことがうかがえます。

 

松玄子 国常立神社

wikipedia 天香山神社

橿原市 天岩戸神社

 

wikipedia 畝尾都多本神社

wikipedia 畝尾坐健土安神社

 

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