古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

私がオバアさんになっても

 

f:id:karibatakurou:20200602123049p:plain

 

巡行に出た先で美しい少女に出会い「宮中に召し出すから嫁には行かずに待っていてくれ」と言ったまま忘れていた天皇。それから数十年の時が経ち、今は老婆となったその時の少女アカイコが天皇に謁見していた。

 

「あ・・アカイコか・・あの時の・・」

「ああ、陛下・・思い出して下さったのですね・・あの時以来、わたくしは嫁には行かずに、今日まで陛下からお召し出しが来る時をお待ち申し上げ・・すでにわたくしは齢80歳になってしまいました。

わたくしはこの通り老いて痩せ、しなびた体になってしまいました。こうなってはもはやお召しいただくわけにはまいりません。

しかしこのまま陛下が御存じないままなのは、わたくしの心は耐えられず・・今日こうして参上させていただきました」

 

「ああ・・そうであったか・・すまない!わたしはすっかり忘れていた・・

なのにそなたは、わたしの言葉を忘れず・・・若い娘のころを虚しく過ごし、今日まで操を守り通してきたというのか・・

何とかなしいことであろう・・・」

 

天皇はアカイコを憐れみ、今すぐにでも自分のもとに召し出したいと思った。しかし、今は80歳の老婆である。

 

天皇は彼女と結婚することができないのを悲しみ、アカイコに言葉を賜った。

 

「神の樫の木の下にいる、触れてはいけない神聖な少女・・・若いときに添い寝しておけばよかったものをな・・」

 

アカイコは

「もったいのうございます・・操を守り通し神に仕えた巫女、今は若い娘が羨ましゅうございます」

と答えた。

 

アカイコが泣く涙は、着ていた朱染めの服をすっかり濡らしていた・・

 

天皇は数多くの品をアカイコに下賜し、アカイコは故郷に帰っていったという。

 

前<<<  天皇を訪ねてきた老婆 - 古事記の話

次>>>  アブと蜻蛉と天皇と - 古事記の話



古事記上巻 日本神話 目次
古事記中巻 神武天皇~応神天皇 目次
古事記下巻 仁徳天皇~推古天皇 目次

 

 

☆私がオバアさんになっても

 

♪ 私がオバアさんになったら~ 天皇はオジイさんよ~

 

のはずですよね。

 

しかしこの話読んでると、天皇だけ年取らず若いままなのはなぜだろう・・

 

もっとも、古事記では雄略天皇の寿命は「124歳」なんだそうです・・

 

 

 ≪リンク≫
 
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
古事記ゆかりの地を訪ねて