巡行に出た先で美しい少女に出会い「宮中に召し出すから嫁には行かずに待っていてくれ」と言ったまま忘れていた天皇。それから数十年の時が経ち、今は老婆となったその時の少女アカイコが天皇に謁見していた。
「あ・・アカイコか・・あの時の・・」
「ああ、陛下・・思い出して下さったのですね・・あの時以来、わたくしは嫁には行かずに、今日まで陛下からお召し出しが来る時をお待ち申し上げ・・すでにわたくしは齢80歳になってしまいました。
わたくしはこの通り老いて痩せ、しなびた体になってしまいました。こうなってはもはやお召しいただくわけにはまいりません。
しかしこのまま陛下が御存じないままなのは、わたくしの心は耐えられず・・今日こうして参上させていただきました」
「ああ・・そうであったか・・すまない!わたしはすっかり忘れていた・・
なのにそなたは、わたしの言葉を忘れず・・・若い娘のころを虚しく過ごし、今日まで操を守り通してきたというのか・・
何とかなしいことであろう・・・」
天皇はアカイコを憐れみ、今すぐにでも自分のもとに召し出したいと思った。しかし、今は80歳の老婆である。
天皇は彼女と結婚することができないのを悲しみ、アカイコに言葉を賜った。
「神の樫の木の下にいる、触れてはいけない神聖な少女・・・若いときに添い寝しておけばよかったものをな・・」
アカイコは
「もったいのうございます・・操を守り通し神に仕えた巫女、今は若い娘が羨ましゅうございます」
と答えた。
アカイコが泣く涙は、着ていた朱染めの服をすっかり濡らしていた・・
天皇は数多くの品をアカイコに下賜し、アカイコは故郷に帰っていったという。
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☆私がオバアさんになっても
♪ 私がオバアさんになったら~ 天皇はオジイさんよ~
のはずですよね。
しかしこの話読んでると、天皇だけ年取らず若いままなのはなぜだろう・・
もっとも、古事記では雄略天皇の寿命は「124歳」なんだそうです・・
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